心の隙間の形が呼応するように、ふっ…とお互いが居場所を占めてしまうことってある。
そんな時間を、細密な映像で瑞々しくも静かに描いた作品。
靴職人を目指している高校一年生の孝雄。雨の日の午前中は学校をサボって新宿御苑内の四阿で靴の構想を練ることを習慣としている。
彼は六月のある雨の日、その四阿に先客を見つける。
朝だというのにチョコレートをつまみにビールを飲む二十代と思しき女性。いかにも出勤前の社会人然といった感じの、きちんとして清楚な身なりとは対極的なその行動に、孝雄は目を奪われてしまう。そしてそんな彼女の足には、シンプルだけど綺麗な靴がはめられていた。
その日から始まった雨の日の邂逅は、それぞれに孤独を抱える二人の距離を近づけていくけど…。
その家庭環境ゆえか、15歳という年齢に反して妙に老成し、自分の世界を築きあげながら夢に邁進する少年・孝雄。
そして、仕事と恋愛双方の不調から、歩みを止めてしまっていた27歳の女性・雪野。
二人の対称性と調和性、そして補完性といった複数の要素から生まれた独自の関係性が、一つの道筋の中でまとめあげられ、たった46分の枠の中でもきちんと描かれています。
新海誠監督の代名詞ともいえる精密な作画がリアリティと暗喩性を添えていますが、あくまで添える程度で、淡い光彩の撮り入れ方の巧みさのお陰で泥臭くまではならずに綺麗に魅せてくれるので、さらりと観るのにいい作品ですね。
個人的には、雪野が読んでいた小説が、私が大好きな作家さんの大好きな作品だったのが、かなりのツボでした。これで星0.5くらいアップしたくなったくらいに。
実在のものを混ぜ込む新海戦略にまんまとハマったのです…。
- 感想投稿日 : 2018年12月2日
- 読了日 : 2018年12月2日
- 本棚登録日 : 2018年12月2日
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