「母を愛せないが、愛さないこともできない」
互いに決して愛してないわけではないのに、分かり合えずに罵り、傷つけ合い、そばにいられない、17歳のユベール少年とその母親の姿を描いた作品。
思春期特有の、親への反発、苛立ち、そして、身勝手さや甘え、依存などが、うまく形付けられ、一つの流れとして表現されています。
そして、ユベールの恋人であるアントナンの家庭との対比も、実によくできている。
ユベール同様に、母一人子一人のアントナン少年の家。
アントナンの母は、若い恋人を家に連れ込んでコトに及んだ後、しどけない姿のまま平然と思春期の息子に引き合わせてしまうような人。
それなのに、そんなことはせずに必死に仕事や家事、そして息子対応をこなそうと頑張る筈のユベールの母と比べて、こちらほうが息子アントナンとの関係はどうやら良好。
ユベールの母が著しく動揺した息子の性的マイノリティな立場にも寛容で、息子の同性の恋人であるユベールと三人で自宅で一緒に食事を取ることをさらりと楽しんでさえいる。
これは、アントナン親子がユベール親子と比べて日々の会話が多いのと、別人格として互いを尊重する土台が出来ていることを示唆していると同時に、アントナンがユベールよりも精神的に自立し、自分の立ち位置を理解する成熟さを持っていることが大きいのかもしれない。
若さゆえのヒリヒリするような激しい感情や未熟さを写すだけでなく、その上先にある、視点を変えた広い世界までも同時に見せてくる手法。
たった19歳の時に、監督、脚本、主演を務めてこんな映画を作ったグザヴィエ・ドランの俯瞰的な視点と構成力、早熟な才能には、驚かずにはいられません。
そして、まるでフランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」(1959)へのオマージュであるかのような某シーン。
あ、これ、ドランはこの作品を「現代版『大人は判ってくれない』」として撮ったのかも、と思うと、旧作映画好きにはとても楽しい気持ちになる作品でした。
- 感想投稿日 : 2018年10月27日
- 読了日 : 2018年10月27日
- 本棚登録日 : 2018年10月27日
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