はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]

監督 : ジョン・カーニー 
出演 : キーラ・ナイトレイ  マーク・ラファロ  アダム・レヴィーン  ヘイリー・スタインフェルド 
  • ポニーキャニオン
3.91
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本棚登録 : 796
感想 : 153
4

たとえ人生の一時でも、こんな「同士」と出逢えて何かを創れたら、素敵だなあ…と、愛おしくも染み染みと見終えた作品。

駆け出しの女性ミュージシャンと落ち目の中年男性プロデューサーの偶然の出会いから始まる、再生と前進の物語。

駆け出しミュージシャンのグレタは、同業で先に売れた彼氏のデイヴに裏切られて失意のどん底にいる時、たまたまバーで唄って、音楽プロデューサーのダンの目に留まる。
とはいえ、ダンはといえば、ここ数年はヒットに恵まれず、自身が持つレーベルでも、共同経営者からクビ宣告されたばかり。おまけに、妻や娘とは別居中で、こちらも公私ともにどん底状態。

それでもグレタの才能を確信したダンは、二人で彼のレーベルに売り込みをかけるけど、デモテープがなくては意味がないと門前払い。
スタジオを借りるお金のない二人は、仲間を集め、ニューヨークの街角のあらゆるところで、ゲリラ的なレコーディングを重ね、アルバム制作に乗り出す。

地下鉄のホームで、ビルの屋上で、スラム街に近そうな寂れた街角で…何も持っていないのに、音楽への愛と創作欲に身を任せて、活き活きと楽曲を生み出していく二人とバンドメンバー。

元カレのことで自身も穏やかじゃないというのに、ダンの崩壊している家庭を取り持とうと手を差し伸べるグレタ。
夜の街で、お互いの心をさらけ出し、通わせるように、それぞれの音楽のプレイリストを、一緒に聴くシーンなんか、とても素敵。

グレタとダンの心の距離はこれ以上ない程に縮まるのだけど、アルバムが完成したときに二人がとった道は…というお話。

ストーリー展開自体はとてもシンプルなのだけど、その分、音楽が際立っているし、単なる成功物語ではなく、音楽業界の課題やジレンマなどを巧みに盛り込んでいるところもいい。

グレタの、自分の作った音楽を、そのままの形で届けたいという一途な想いもわかる。
けれども、多くの人に聞いてもらうには、大衆受けしそうな要素の盛り込みやアレンジ、一定のレールに乗せなくては、結局は誰の目にも耳にも入らず、消費者に届かない、という業界人の意見もわかる。

このジレンマは、どちらが正しいということはなく、何かを産み出し、発信するときには、ずっと付いて回るのでしょうね。

だからこそ、ラストで、グレタの思いを組んで、プロデューサーとしてはあるまじき行動をとったダンの心意気に、胸が熱くなります。

ラストは、素敵な反面少し悲しいのだけど、それもまた、人生の一ページを描いている、といった感じて、心に残る作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2018年1月8日
読了日 : 2018年1月8日
本棚登録日 : 2018年1月8日

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