はたからはどんなに恵まれているように見える人でも皆、実は何がしかの孤独を感じているし、その孤独は埋めたい。そして、心のどこかで誰かに手を差し伸べてほしいと思っている。
でも、結局答えを出すのは、意思を持って行動する自分自身。
そうでないと後悔するから。
でも忙しさにキリキリしていると、そんな真理は簡単に忘れてしまう。
そんな局面で決断して乗り切るのに意外と大切になるのが「経験」。
本作の場合は「年の功」ともいう。
正直、ストーリーはあえて自分で考えてまとめてみようと思えるほど凝っているでもなく、各レビューサイトに載っているそのままだし、結末も大多数の人が途中で想像するであろう定番の感じ。
カメラワークや音楽といった部分にこの映画にしかない個性があるとも正直思わない。
女性の社会進出や苦労、それに追いつかない世間の理解や嫉妬、専業主夫についてなどの 現代の社会問題要素も、もっと巧みな演出と視点で取り上げている作品なんて、正直いくらでもある。
でも、とっても魅力的な作品だった。
きっとこれは、ロバート・デ・ニーロの卓越した演技力が炸裂している故の魅力に負うところが大きい。
孤独や喪失、初めての環境への戸惑い、それでも基本的に失わない落ち着き、時にみせる男性としてのそわそわ感、包容力、他者への理解力、いざという時の意外と大胆でアグレッシブな様…どのシーンもいい。
社長役のアン・ハサウェイだけでなく、同僚となった周囲の若者たちにも丁寧に接し、信頼をつかんでいく様は、本当に素敵。
まあ、現実世界では、自らの生きた時代とは違う時代を必死に生きる30代の起業家女性に対し、下心も見下しも説教じみた様もなく、穏やかかつ冷静に、けれどコミカルに手を貸し寄り添える70代の素敵老紳士なんて、絶滅危惧種どころか、ほとんど存在しないといっても過言ではないのですけど。
そんなファンタジーを現実的にサラリと演じられてしまうデ・ニーロの技量はやっぱりすごいって思う作品でした。
- 感想投稿日 : 2019年5月5日
- 読了日 : 2019年5月5日
- 本棚登録日 : 2019年5月5日
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