新しい科学論―「事実」は理論をたおせるか (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社 (1979年1月24日発売)
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クーンの「パラダイム論」に代表される「新しい科学論」の内容を、中高生向けに解説ている本です。

著者は、わが国に新科学哲学を紹介することに長く力を注いできた研究者です。本書は二つの章に分かれており、第一章では常識的な科学観にひそむ前提がとりだしされています。第ニ章は、前半で示された科学観をひっくり返す新科学哲学の見かたがわかりやすく解説されています。著者は、現代の啓蒙主義的科学観の来歴を訪ね、キリスト教的世界観に根ざしつつ、そこから脱却する努力のなかで形成されてきたという文化史的な考察がおこなわれています。つづいて、ハンソンが主張した「観察の理論負荷性」にかかわる認識論的考察が展開されます。

本書の主題になっている「新しい科学論」は、いわゆる社会的構成主義の理論的な基礎を提供してきたことで知られています。ただし、科学の社会学的な観点からの分析が認識論における相対主義にまで拡張されることに対しては批判も多く、この点にかんしては他の科学哲学の入門書などで補うことが必要であるように思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学・科学・技術
感想投稿日 : 2020年11月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年11月27日

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