神の証明: なぜ宗教は成り立つか (講談社現代新書 1392)

著者 :
  • 講談社 (1998年2月1日発売)
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感想 : 8
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カントールによって創始された集合論の発想を借りることで、神と人間の関係を解明しようとする試みです。

本書の前半では、主として東方正教会の歴史を振り返りつつ、三位一体や神との合一といった、神と人との矛盾的な関係について、どのような考察がなされてきたのかということが解説されています。ここで著者は、父なる神と子なる神は「ウーシア」(本質)において同一であるが「ヒュポスタシス」(位格)において区別されるという三位一体の定式をとりあげ、「ヒュポスタシス」を「実存」と解釈する見方を示しています。

後半に入って集合論への言及がなされますが、著者の考えは「神の本質としての無限集合が神の実存としてのその部分集合と同一になること」に尽きており、それ以上に汲み取るべき内容があるとは認めがたいように思います。もっとも、西洋の思想的伝統のなかで神の存在を数学的に証明しようとする試みがおこなわれてきたことも事実です。これが西洋思想史における重要なテーマであることはまちがいないのでしょうが、本書ではそうした伝統への参照もなされておらず、著者自身の思いつきの域を出ていないように感じられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教
感想投稿日 : 2020年1月5日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年1月5日

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