「学ぶこと」に対する「リスペクト」がなくなってしまったという指摘は納得できます。この国の未来に対する強い危機意識が、著者にこの本を書かせたのではないかと思いますが、「あとがき」で取り上げられている子どもたちの読書や学習に対する熱気を伝えるエピソードには、まだこの国には希望があるということを感じさせられます。
ただ、大正教養主義を「リスペクト」する著者自身の好みが強く反映されていて、ドイツ哲学やロシア文学を学ぶべきだとされていますが、これには全面的には賛同できないとも感じました。もっと多くの、それこそどんな対象からでも、私たちは学ぶことができるのではないでしょうか。著者が批判的に言及している、戦後の日本が受け入れてきたアメリカの大衆文化や「ガンダム」などのサブカルチャーにも、学ぶことはたくさんあるはずだと思います。
もちろん、そうした可能性を著者が否定しているわけではありません。「スラム・ダンク」の友情論についての本を書いたこともある著者が言いたいのは、アメリカのロックや日本のサブカルチャーにも優れたものはあり、そこから多くのことを学べるのは確かだけれども、そのことを理由にして、他の学問や文化から学ぶべきものなどないといった態度を取るのは間違いだ、ということなのかなと理解しています。
ただ、やっぱり著者自身の「教養」観に基づいた懐古的な話が多いので、そこに抵抗を感じる読者も出てくるのは仕方がないという気がします。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
教育
- 感想投稿日 : 2014年2月7日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年2月7日
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