「虫屋」の著者による環境論。
著者は、近代に入って加速的に進められることになった、人間の意識に扱うことのできる情報だけしか見ようとしない傾向を、「脳化」や「都市化」という概念によって捉えています。本書は、そうした視点から環境問題の何が本当の問題なのかを論じています。
「ああすれば、こうなる」という、意識によって捉えられた筋道がすべてだと考える発想が、全面的に開花したのが「都市」です。だから都市では、何か問題が起こると、その原因が追究され、責任者が見つけ出されることになります。しかし「自然」には、そうした意識の筋道によって捉えられないものがたくさんあります。
環境問題は、「ああすれば、こうなる」という意識の論理で突っ走ってきた人間社会が、自然という意識の外部の存在を見落としてきたために生じたと、著者は考えます。それゆえ著者は、環境問題を解決するための方法を手っ取り早く求める環境保護論者たちにも反対します。なぜなら、そうした発想は「ああすれば、こうなる」という従来の考え方を一歩も出ておらず、「自然」を意識によって理解できるものと考えているからです。
「じゃあ、どうすればいいんですか」という短兵急な問いかけに対して、著者は半ば投げやりに(だと思うのですが)、参勤交代を義務づけるべきだ、と答えます。1年のうちに3ヶ月は田舎で暮らすことを義務づけるというのです。「そうしたらどうなる」という問いには、もはや答えはありません。著者はただ、「やってみれば、自分の考えが変わるであろう。どう変わるか。やってみればわかる」と言います。
環境問題に対する性急な答えを求めることを戒めた本と言えるように思います。
- 感想投稿日 : 2014年4月16日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年4月16日
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