第二部は、第一部の主人公であるキクの従妹であったミツの孫にあたる奥川サチ子が主人公を務める、第二次世界大戦末期の長崎を舞台にした作品です。
サチ子は、幼なじみでイタズラ好きの少年である幸田修平に想いを寄せています。成長した修平は、慶応大学に合格し、詩人となることを夢見ていますが、サチ子の気持ちにはなかなか気づいてくれません。
サチ子たちが幼少のころに大浦天主堂にやってきたコルベ神父は、その後ドイツに帰国し、アウシュヴィッツに連行されます。いっさいの希望がうしなわれてしまった絶望的な状況のなかで、コルベは愛を信じつづけ、みずからの身を賭して愛を果たしうることを示します。
その一方で、日本の戦況は日増しに悪くなっていき、修平のもとにも召集令状がとどけられます。キリスト教徒である彼は、戦争で殺しあいをしなければならない立場に置かれたことに苦しみますが、残酷にも彼に特攻隊としての任務があたえられることになります。修平は悩みながらも、みずからのたどらなければならなかった運命にひとつの意味を見いだそうと考えつづけます。
第一部のキクとは異なる時代ではあるものの、キリスト教を信仰する者に対して彼らの生きた時代が課することになった重い問いかけを背景としながら、主人公であるサチ子の悲恋がえがかれています。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説・エッセイ
- 感想投稿日 : 2023年7月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2023年7月18日
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