資本主義を語る (ちくま学芸文庫 イ 1-2)

著者 :
  • 筑摩書房 (1997年2月1日発売)
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感想 : 8
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著者の講演やインタビュー、対談などを収録している本です。

経済学と進化論の関係について論じた文章は、おそらくフーコーの『言葉と物』が下敷きになっているように思われます。

『マルクスその可能性の中心』の著者である柄谷行人との対談では、かなり立ち入った議論に及んでおり、理解の行き届かないところがありました。著者の『貨幣論』と柄谷のマルクス論はかなり似ているように思えるのですが、対談中では両者の違いについて言及されています。たしか『貨幣論』では、貨幣の起源に関する2つの説、すなわち貨幣商品説と貨幣法制説が批判され、どのような起源であれ、貨幣が貨幣として流通するという事態が生まれたことが、貨幣とそれによって動いていく資本主義を創出したということについての考察がおこなわれていましたように記憶しますが、これに対して柄谷は、「起源」と「反復」に関する議論が経験的な水準で語られているのか、超越論的な水準で語られているのかという問題に、かなりこだわっているように見えます。「それじゃいったい、どういう語り方ができるの?」という疑問が出てきますが、これについては柄谷の『内省と遡行』から『探究Ⅰ・Ⅱ』に当たってみなければなりません。

網野善彦との対談は、日本の中世における経済と産業の具体的な議論に基づきつつ、従来のマルクス経済学を超えていく契機が探られています。また、著者の妻である水村美苗との対談では、文学と日本社会をめぐって、比較的自由な議論が交わされています。

『貨幣論』のようにかっちりまとまった内容ではありませんが、貨幣の問題を中軸にさまざまな領域へと伸びていく著者の思索の柔軟さに啓発されます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2016年3月10日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年3月10日

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