力への思想

  • 学芸書林 (1994年9月1日発売)
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竹田青嗣と小浜逸郎の対談です。両者はともに、「エロス」という概念を機軸に実存的な立場からさまざまな問題を論じていますが、竹田自身が「あとがき」で述べているように、竹田は「認識原理とか世界像の原理問題に偏向的好みをもっている」のに対して、小浜は「まさしく生活世界の思想家で、ことに「子供」「教育」「家族」といったテーマについて、独自の強靭な思想を積み上げてきた」といえます。本書ではこの二人が、「エロス」という基本原理について語り、また恋愛や結婚、フェミニズム、差別、死、さらには心霊現象など、文字通り多岐にわたるテーマについて語りあっています。

わたくし自身、かつて竹田の実存的な欲望論の立場に非常に感心させられたことがあり、その延長で立場の近い小浜の著書もいくつかまとめて読んだこともあったのですが、今では両者の掲げる実存的な立場は、どこにもいきつくことのない袋小路のようなものではないかという気がしています。また、小浜はフェミニズムに代表される社会構築主義を執拗に批判し、竹田はデリダや柄谷行人らのポストモダン思想に見られる懐疑論的な発想を現象学の立場から原理的に批判することを試みていますが、これらの議論は妥当とはいえず、せいぜいのところ俗流パラダイム論に対する批判にしかなりえないと考えています。

そういうわけで、この二人の思想に対する興味を失いつつあるなかで読んだため、否定的なところがやけに目についてしまうといった案配でした。著者たちの思想に関心を抱いていたときだったら、もっとおもしろく読めたのではないかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・思想
感想投稿日 : 2015年7月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年7月28日

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