ずる―嘘とごまかしの行動経済学

  • 早川書房 (2012年12月7日発売)
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一般に信じられているような、不正は利益と罰則のバランスを合理的に計算した結果として行われるという犯罪モデルは、「シンプルな合理的犯罪モデル(Simple Model of Rational Crime:SMORC)と呼ばれる。

しかし、著者の行った様々な実験により、人はSMORCのような単純なモデルに従って不正を行うわけではないことが立証されている。

つまり、「捕まる確率を上げる」「罰則を重くする」といった単純な措置で必ずしも犯罪を抑止できるとは言えない。

本書で行われた実験によって明らかになった事実をまとめると以下のようになる。

不正を促す要因:
・自分を正当化する想像力
・利益相反(自分と相手の利益が一致しない)
・創造性
・一つの反道徳的行為
・誘惑に抵抗する「意志力」の消耗
・他人が自分の不正から利益を得る状況(正当化の理由になる)
・他人の不正を目撃する(割れ窓理論)
・不正の例を示す文化(文化圏ごとの個別の不正に対する価値観?これよく分からん)

影響なし:
・不正から得られる金額
・捕まる確率

不正を減らす要因:
・誓約
・署名
・道徳心を呼び起こすもの
・監視

訳者あとがきで簡潔にまとめられていたので引用:

"わたしたち人間は、一方では正直でありたいと思いながら、その一方でズルをしてトクをしたいとも考える。そのせいで、「正直な人間」という自己イメージと実際の行動との間に、ズレが生じることがある。わたしたちはそんなとき、驚くような柔軟性を発揮して、「つじつま合わせ係数」の大きさを自在に変えることで、ズレを解消しようとする----これがアリエリー教授の仮説だ。係数はどんなときに大きくなる(ずるをしやすくなる)のか、小さくなる(ずるをしにくくなる)のか。例によってユニークでおもしろい(ときにショッキングな)実験の数々をとおして、それを明らかにしていく。"

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年10月22日
読了日 : 2018年10月20日
本棚登録日 : 2018年10月20日

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