朝井リョウさん、直木賞おめでとうございます!
わずか数年前は、雨の中、水を吸い尽くしたバスローブ姿で仲間と公道を行進し
青函トンネルを一般車両もすいすい通れると思っていたあなたが直木賞を受賞するなんて
おかあさんは。。。おかあさんじゃないけど、親戚でもないけど、うれしい♪
というわけで、予約したはいいものの、なかなか届かない『何者』は後回しで
お弁当の中の甘い卵焼き(大好物)を最後まで残しておくかのように
読まずに取っておいた、『桐島、部活やめるってよ』を読んでみました。
う~ん、みずみずしい!
制服の中を吹き抜ける風、自分の不甲斐なさに気づかない振りをする痛さ、
片想いの相手が不意に近づいてきた時に、全身の細胞が一気に目覚める感じ。。。
高校時代を振り返ろうとすると(かなり)遠い目をしなくてはならない私でも
当時の皮膚感覚や切なさ、苦さを思い出してしまうほどの臨場感。
デビュー作だけあって、後に書かれた『少女は卒業しない』などの
煌めくように美しい比喩に比べると、表現がかなり素直というか、直接的だけれど
そこもまた、若さが迸るようで、微笑ましくて。
校内ヒエラルキーの頂点にいたらしい桐島くんが男子バレー部をやめたことで
部内のバランスが狂って大きく影響を受けた子、噂話をするくらいの距離感の子、
トップが崩れようがどうしようがほとんど影響を受けない「底辺」と言われる子。
チャットモンチーやaikoの歌詞、映画『ジョゼと虎と魚たち』の台詞と
登場人物のその場その場の気持ちを絶妙にリンクさせて描くセンスが素敵♪
こういうテーマを選ぶと、「底辺」にいる子たちの苦しみを描くことに終始しがちだけれど
容姿にも恵まれ、たいして苦労もせず何事もそつなくこなしてしまう「上」の子の目に
全身全霊で打ち込める、大好きなものを持っている「底辺」の子を
「まぶしいひかり」として映し出すところに、朝井さんのやさしい視線を感じます。
それぞれの場所に必死に喰らいついてもがく5人の高校生の
けなげでいとおしい毎日の向こうに、爽やかな笑顔でトップに君臨していたはずの
桐島くんの苦しさや、地道な努力もちらちらと垣間見えるのが心憎い、
まさに「取っておいてよかった卵焼き♪」のような作品でした。
- 感想投稿日 : 2013年1月19日
- 読了日 : 2013年1月18日
- 本棚登録日 : 2013年1月19日
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