ずっと気になっておったのですが、やっと観終わりましたよ。北海道からの移動の飛行機の中で観た。
えーっと、まず翁。讃岐造よ、お前は凄い俗物で安心したwww姫のため、と言いながら、完全に自分のためだよなぁ。自分がのし上がっていくことにもの凄い満足感と陶酔感を覚えていたと思う。ダメな親の典型として書かれているのが非常に好印象だった。
ラストに行くに従って、すごく内容が粗くなっていく。ラストのところとか、侍女が子供たち連れて出てくるまでは「どんだけやっつけなんだよ」と思ったもんだよ。侍女が子供たちと一緒に歌を歌いながら、翁と婆が目を覚まして最後の別れが描かれる、これがあってまだ良かったよ。それもなかったら、ホンマにラストはやっつけもいいところだ。
一方で、田舎にいた時にかぐや姫が友達と一緒に遊んでいるところ、かぐや姫が成長するところ、などは非常に丁寧に描き込まれている。圧巻だったのは、名付けの宴(?)から飛び出して田舎へ駆けていくシーン。何ともの凄い書き込みなんだ、と圧倒された。丁寧、というのとはちょっと違う、でも描き殴っているわけでもない、勢いを大事にしてそのまま一気に描き上げた、というシーンだった。このシーンはホンマに凄いと思った。かぐや姫の心を表して、不安定さと拠り所を重ねあわせた、というような。あのシーンだけを見ても、『HUNTERXHUNTER』のジャンプ掲載時の手抜き絵にしか見えないのだけど、それまでの流れを踏まえた上で見ると、計算され尽くした絵であることがよく分かる。素晴らしいシーンだった。
それだけに、そこと比較してあのラストシーンは、気の抜けた音楽も含めて、やっつけ感があるよなぁ、と思うわけです。
あくまで想像だけど、高畑勲は恐らく『かぐや姫の日常』『かぐや姫の成長』を描きたかったのではないだろうか。それ以外のものはある種全ておまけ、的な感じで。だからこそ、捨丸兄ちゃんとあそこで会わなくてはいけなかったし、捨丸兄ちゃんと空を飛ばなくてはいけなかったのだと思う。まあ空を飛ぶシーンはどうよ、と思ったのだけど。
高畑勲の想いが存分に詰まった映画であることは間違いない。力が入りまくった絵がそれを物語っている。であるがゆえに、それを楽しむ映画なのだな、と思った。主義主張を語るでもない、ただ高畑勲が描きたいように描いた、その題材がたまたま『竹取物語』だった、というだけの話です。賛否は結構分かれるだろうな。僕は好きですけどね。
ちなみに。『竹取物語』の中で、5人の求婚者が頑張って宝を取りに行くところなんかは結構好きだし、月に帰るときに帝に不老不死の薬を渡し、それを富士山に投げ捨てて「不死山→富士山」という逸話も好きなんだが、前者はサラッとだけ記載され、後者に至ってはなかったことにされているのが残念だったなぁ。まあ、映画の中の帝はかなりイケてなかったし、ソッコー嫌われてたけどなwww
- 感想投稿日 : 2016年2月6日
- 読了日 : 2016年1月28日
- 本棚登録日 : 2016年2月6日
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