ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

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  • 講談社 (2004年10月15日発売)
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内容(「BOOK」データベースより)
『羊をめぐる冒険』から四年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。

失われた心の震えを回復するために、「僕」は様々な喪失と絶望の世界を通り抜けていく。渋谷の雑踏からホノルルのダウンタウンまで―。そこではあらゆることが起こりうる。羊男、美少女、娼婦、片腕の詩人、映画スター、そして幾つかの殺人が―。デビュー十年、新しい成熟に向かうムラカミ・ワールド。

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さてここで質問です。
この二人はこのあとどうなったでしょうか?

学生の頃読んだ時に感じた「なんじゃこりゃ」感は正直これだったんだな。
たくさんの伏線があるけれど、全部は回収されない、
そのもどかしさが私を村上春樹から遠ざけた。

そして今も、本当はすっきりしないところも残る。
メイも、キキも、本当は...?
そしてディック・ノースは...?
五反田君の存在価値は...?
ユキとアメはその後どうなったの...?
そして羊男は...?

でもきっとこれはハッピーエンド。
愛する人と最後に結ばれて、彼女を取り戻すために
初めて「僕」が必死になる姿を見ることが出来ます。

ああ、この人たんたんとうまく踊っていたけど
リアルに生きていたんだな、と初めて感じた部分ですw

最後の必死ぶり(1Pもないけど)が「ダンス・ダンス・ダンス」だった。
私の中では(・∀・)

羊男は、と書いたけれども、羊男からの解放、なんだろう。
それはつまり過去からの解放。
だから羊男が姿を消すのは、ここでは当然のことなんだろうな。

いや~でもすごいね。
ミステリーと言ってもいいくらい人が死ぬしね。
(ミステリーとしてはバッドエンディングだね)

素人も含めて評論家がたくさん生まれるの分かるわ~。
本当村上春樹の解説本が何冊もあるのも全然不思議じゃないw

なぜかあれこれ語りたくなるねw

「僕」の高等遊民ぶりには垂涎でした。
一生けん命稼いだからこそなんだろうけど。
私も人のお金でハワイでのんびりしたーいw

前作でも書いたけれど、この人の比喩力本当にすごい。
思いもかけない表現で、でもなぜかぴったりはまる。
日頃から感性を研ぎ澄ましていないと出てこないよね。
いや本当、教科書に載せていいくらいだわ。
テストに出していいくらいだわ。

それを探すだけでも読む価値があります。

そして登場人物が魅力的。
五反田君の存在なんてすごくリアルに感じられます。
自殺した二枚目俳優さんなんかを思い浮かべたりして...

ただ、この中で一番かわいそうなのは、
わずか15歳の「ユキ」。

彼女がキーパーソン(ダンスのパートナー)となって
彼にいろんなことを気づかせてくれるのですが、
きっとその人生はつらいだろうな、と。

時に人は鈍すぎる方が幸せだったりするしね。
(鈍感力とかありましたね)

でも彼女が大人になって、あの感覚をなくしてしまうとしたら、それはそれでもったいない...
けれど、ユキには幸せになってほしいなぁ...

そんな中ではユミヨシさんが一番いけ好かない登場人物だったw

壮大で、哀しくて、東京で、ハワイで、札幌で、
片腕で、ゲイで、娼婦で、俳優で、ホテルの精で、
洋楽で、ピナコラーダで、パスタでサンドイッチで、
デビット・ボウイで、スバルで、マセラッティで、

もうもういろんな要素が含まれた最高の
エンターテインメントだったと思います。

やっぱりノーベル賞候補は違いますね...
羊を巡った後に、ぜひ^^

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 村上春樹
感想投稿日 : 2015年5月26日
読了日 : 2015年5月26日
本棚登録日 : 2014年3月28日

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