パンプキン! 模擬原爆の夏

  • 講談社 (2011年7月27日発売)
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本棚登録 : 323
感想 : 52
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子どもにとって「戦争を知る」ということはどういうことなのか。そのことを、「子どもたちに対して」「子どもにわかる言葉と感覚」で描く物語。これまで戦争にあまり興味の無かった主人公ヒロカが、模擬原爆の個人的研究をきているいとこのたくみに触発されて自分でも調べていく過程で、戦争の理不尽さと複雑さを描きつつ、それらを「知る」ことの大切さにも深く踏み込んでいきます。物語の随所に「知る」ということが以下に大事かを何気なく織り込んでいるのですが、大人の目から見ると、その裏側にある令丈さんの想いの強さ、知って欲しい、「知る」ということを求めて欲しい、という想いが伝わってきます。

そして、恐らくあまり知られていないであろう模擬原爆を含め、原爆がもたらした間接的な被害。それらや、「戦争」そのものに対してヒロカが抱く強い憤りによって、戦争そのものに対する令丈さんの強い想いも伝わってきます。

上手いのは、主人公である戦争の聞き手を小学生にしているだけでなく、その語り手も小学生にしていること。いとこのたくみを小学生の個人研究家とちう設定にすることで、友だちが友だちにわかりやすく家庭教師をするような、そんな風に戦争の知識を伝えていくので、すごく子どもにも伝わるのではないかと思います。

内容が内容だけに分類を迷うところですが、これはやはり「知らない子どもに知って欲しい」という観点からも、令丈さんの他の作品と混ぜて置きたいかな。理想は3冊買って文学と歴史と戦争コーナーの全部に置きたいですが…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童・小説
感想投稿日 : 2011年10月25日
読了日 : 2011年10月25日
本棚登録日 : 2011年10月25日

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