夢と眠りの博物誌

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  • 青弓社 (2012年12月9日発売)
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感想 : 2

このところ、ねむりについての小説を読んでいるので参考になるかと。
伝説、神話から思想・文学・芸術を縦横無尽に紐解き、様々な側面から夢と眠りと死についてとらえ直した充実の内容。ページ数は少なめだが、得ることは多かった。
特にレヴィナスの「眠りとは、不眠が現前させる《裸の事実》を祓うための《悪魔祓い》であり、自己をひとつの場所に委ねる、避難所を得ること」といった不眠の定義は興味深い。

歴史上何度かのパラダイムシフト。古代、眠りと死は農耕の過程を象徴した寓話であり死と再生の循環の物語であったが、中世、キリスト教の布教に伴い眠りは単なる肉体的生理現象となり、死とは切り離されていく。そして近代、産業革命以降、労働を妨げる睡眠は邪魔者扱いされ、白熱球の発明により都市から夜が消え、闇は全近代的なものとして嫌われていく。キリスト教的抑圧と近代化による明るさ偏重と暗さへの偏見に対する闇からの復讐者としてのドラキュラ=不眠者=生ける屍。不眠は狂気を誘発する。人は《裸の事実》に耐えられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ねむり 夢
感想投稿日 : 2015年5月13日
読了日 : 2015年5月13日
本棚登録日 : 2015年5月13日

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