孤島に建つ「アリス・ミラー城」に集った探偵たち。
ルイス・キャロルやクリスティなどミステリファンならにやりとしてしまう要素をふんだんに含んだクローズド・サークル物です。
このシリーズは世界の終り、世紀末というような終末思想の世界観がとても好きです。
本作も前二作と同様、そうした世界観が前面に出ています。
特徴の一つでもある物理トリックもこれでもかというほど登場しました。
メイントリックに関して賛否両論あるようで、わたしも以下ネタバレに言いたいことをいろいろ書きますが、そんなことはどうでもいいじゃん、と思わせる勢いがあったのも確かです。とにもかくにも最後まで楽しく読めた1冊でした。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局アリス・ミラーについてあやふやなままだったのは残念です。
動機についてもあまりにも非効率、非常識でスッキリしません。
変わった建物なのでまったく構造を理解出来ず、何がどこで起きているんだか分からないのは読みにくかったです。
メイントトリックは確かに難しいですが、会話、話し方、チェス盤などのヒントも後から見るとありますし、アンフェアという気はしませんでした。わたしは叙述トリックには興味がないせいもあって甘いです。
ただ、登場人物が「犯人を見た」と言ってるのに、いくら錯乱状態だったからといって無視したのはどうかと思います。
異様な城で起きる異様な殺人状況は非常に楽しく、仮説の繰り返しもおもしろいです。
優秀な探偵たちが協力プレー出来ない混乱状況の作り出し方も良い。
一人ひとり殺されていく静かな恐怖があるクローズド・サークル物で、突然海上によって虐殺が始まりパニックになるのにはワクワクしました。元刑事の海上の思想はおもしろく、皆殺しという判断も突飛ですが感心。この行動は犯人にとって一番困るのではないでしょうか。
しかし海上も犯人を見たのだから、一番に手錠をかけたり追いかけて殺すべきだったのはそっちだろう、と思いました。
わんさか出てくるやりすぎと言いたいくらいの物理トリックですが、これらが探偵をおびき寄せる為の撒き餌であり、探偵の推理によってその行動を把握するというのも斬新だと思います。
誘蛾灯に引き寄せられるように事件が起きれば現場に向かい調査に乗り出す探偵を、犯人は昆虫採集のように扱っているみたいでした。
- 感想投稿日 : 2012年12月14日
- 読了日 : 2012年12月12日
- 本棚登録日 : 2012年12月6日
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