ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1996年3月1日発売)
3.78
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本棚登録 : 18939
感想 : 2161
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ああ、これは……なるほど、やっとわかった。
この本がどうして毎年必ず「新潮文庫の100冊」に選ばれ、こんなに長く読み継がれているのかが、そしてこの本の良さが。

いつだったか覚えていないほど大昔に(学生時代だったかなぁ)、一度この本を読んでみたことがあった。
が、バーを経営する年上の恋人がいて、セックスをし、それを堂々と語り、酒を飲み、先生に向かって生意気な口をきく、主人公の時田秀美という男子高校生が不良にしか思えず、共感なんてとんでもない、嫌悪感すら抱き、これは私とは無縁の本だと判断、その後いっさい手に取ることはなかった。

それが今夏(2019)、書店でもらってきた「新潮文庫の100冊」の小冊子カタログを見ていて、「この本また今年も入ってるな。この本が入ってなかった年ってあったんかな? そのくらい毎年必ず入ってるんだけど、なんでなんだろう?」とふと思ったのだ。

しかも私の読書バイブル『読書力』の中で、齋藤孝先生が読書力養成のための定期試験を提言しており、これを実践したとある中学・高校での高1の生徒の課題本の中に、この本が含まれているのも気になっていた。

それで、書店で数十年ぶりにこの本を手に取り、改めて買ってみたという、私にとっては記念すべき日を迎えたわけである。

うーむ、なんということか。
全ページ名言だらけではないか。
グサグサと心に突き刺さる。

そうか、そういうことか。

ものすごく大切なことを忘れていたことを、思い出させてくれた。
これは大人が読むべき本なのだ。

この子たちのように、何事も明るくあっけらかんと笑い飛ばすように生きていけたら最高じゃないか。

ごめんね、秀美くん、全然不良なんかじゃなかった。
むしろ一番いい子だよ。
まぁ平気でお酒を飲んじゃうのはどうかと思うけど、高校生にお酒を出す大人の方が悪いということに、現代ではなってしまうかもね。

最初に読んだときは、私がまだ若すぎたんだ。
今は共感の嵐でしたよ。
お母さんとおじいちゃんはすばらしいし、真理ちゃんはかわいいし。

先にも書いたように、私は本書は大人こそ読むべきだと思ったし、著者あとがきにも〈むしろ、この本を大人の方に読んでいただきたい〉と書いてあるのだが、うーむどうだろう、このタイトルとカバーイラストを見て、またカバーの紹介文の「凛々しい秀美が活躍する元気溌剌な高校生小説」というのを読んで、この本を読もう、買おうと思う大人がどれだけいるか……。
ずいぶん損しているのではなかろうか。
もしこれからもずっとこのカバーで行くなら、読んだ人間がこうして口コミでおすすめしていくしかないかもね。


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年7月31日
読了日 : 2019年7月31日
本棚登録日 : 2019年7月31日

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