自分で名付ける

著者 :
  • 集英社 (2021年7月15日発売)
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本棚登録 : 939
感想 : 88
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結婚制度の不自由さ、無痛分娩のありがたみ、ゾンビと化した産後・・・など、妊娠、出産、子育てについて綴ったエッセイ。

普段生きている中で存在する理不尽さに、「それっておかしくない?」と違和感を覚える著者。
わかるわかる、と思いつつも、私は日頃そんな違和感に無意識に蓋をして生きている側の人間で、むしろ理不尽さに対して声をあげ続けてくれた人がいて改善された部分にフリーライドしているような人間で、だからこそ共感する気持ちがありつつも、どちらかというと憧れに近いものを抱きながら読み進めていた気がします。

今年の7月に刊行されたばかりだけあって、液体ミルクのことやコロナ禍のことなどタイムリーな話題も含まれていて、より楽しめる内容でした。

液体ミルクや予防接種もそうだけれど、子育て業界は日進月歩で変化が激しいというのは子育てに目を向けるようになって私も気付いたところ。
保育園の3歳児以上の無償化も本当にありがたいし、10年前に出産していたとしたら随分子育て事情は異なるよなあと思う。
著者が指摘するように女性中心の分野だったからこそ我慢させられていた部分は往々にしてあると思うけれど、今後男性も育児をするのが主流になってきたら、より良い方向に変わっていくだろうか。本来、男性が、とか女性が、とかではなく、子どもも子どもを育てる人も大事にされる社会であってほしいのだけれど。

松田さんの本は初めて読んだけれど、他の本も手にしてみたい。違和感に蓋をしながら生きていると、正直おかしいなと思うことに対して反応する精度も落ちてくる。あれもおかしいし、これはどうなんだ、と思いながら生きることは一歩間違うとすごくしんどくて、心のバランスを取っていかないと病んでしまう。おかしさに気付き闘うことは強さだと思うけれど、それは生まれつきのものというよりも、筋肉のように積み重ねて身についていくものな気がしている。
これから生まれてくる子にとっても生きやすい社会であるように、蓋をしておしまい、ではなく、真っ新な目で社会に目を向けられるよう意識していきたい、と思わされた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2021年8月10日
読了日 : 2021年8月10日
本棚登録日 : 2021年8月10日

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