きつねのはなし (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年6月27日発売)
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本棚登録 : 10422
感想 : 943
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読み終えた後、少し頭を傾げたくなるような、そしてちょっとゾクっとする短編が4つ。独立しているようで、水、ケモノ、芳蓮堂などのキーワードでゆるやかに繋がっている。

短編ということもあり、ずいぶん前に読んだ「宵山万華鏡」を思い出した。

やはり森見登美彦さんは、京都という街を素晴らしい舞台に仕立て上げるなぁ、と思った。この不気味さも「京都」だからこそなんだろうと思う。観光客であふれかえる華やかな表通りから一本入ると何かが起こりそうな、趣があるけれどどこか閉塞感が漂う古い裏路地・・・。京都はもうしばらく訪れていないのに、そんな想像がはっきりとできてしまう。あぁ、京都にまた行きたくなってきた。

この4つの奇譚について、何がどうでどこがどうつながって、時系列は・・・などと考えるといけない。はっきりしない。ジメッとして、ヌメッっとして、ゾクッとして、モヤモヤ。そういう作品なのだ。それでいいのだ、きっと。

好き嫌いが分かれる作品かもしれない。私としては好きではないけれど、読んで良かったと思う作品だった。おもしろかった。

森見さん、黒髪の美女を追いかける阿呆な大学生や、天狗と争う賢い狸だけではなく、こんな物語も書けるんですね。やはり素晴らしい作家さんです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月13日
読了日 : 2023年7月13日
本棚登録日 : 2023年7月5日

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