仇なれども (キャラ文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2004年10月27日発売)
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本棚登録 : 82
感想 : 7
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 とある小さな藩の家老の息子に生まれた鷺沼錦。
 彼は仇討ちと称して、とある男を追っていた。
 彼の名前は三橋一磨。
 一磨は、錦の藩校の先輩で、その美貌故に先輩や他藩の若者にも狙われていた錦のことを守ってくれていた存在だった。
 最初は、真剣での勝負が禁じられてる藩校にあって、自分の腕試しがしたくて錦の護衛をかってでた一磨だったが、錦が実際に襲われ、かげながら見守っていた一磨が姿を見せてから、状況が変わる。
 自分より圧倒的に強い男たちに襲われかけても一歩も引かなかった潔さと一途に自分を慕ってくるその姿に一磨は惹かれ、錦もまた自分を守ってくれる一磨の背中の男らしさに惹かれる。
 そして一年が経つころには、一磨は念兄として錦を抱く。
 それ以来、二人は熱に浮かされるように、夏は川原で冬は一磨の家の書庫で、というように何度も何度も愛し合う。

 ところがある日、一磨が錦の家に泊まりにくることになった日。
 突然、途中で帰ってしまった一磨は、そのまま脱藩してしまう。
 おまけにその日、錦の家に泊まった帰り道に、錦の兄が殺されてしまう。
 その晩、脱藩したのは一磨だけではなく、他にも数人いたのだが、錦は別れた時の様子のおかしさから、一磨が犯人であることを確信していた。

 兄の仇であるはずの相手のことを忘れられない錦。
 明治の世になり、仇討が禁止されても一磨を探すことを止められなくて……

 という話でした。
 実は、錦の兄と錦はあまり仲が良くなくて、錦は一磨に親しみを感じていた。
 けれど、やはり兄を殺されたことはやはり衝撃で、どうしてそうなってしまったのか、何より自分を捨てて行ってしまったのは何故なのか、それが聞きたくて一磨を探している。
 という内容でした。
 実のところ、一磨も錦のことを今でも大切に思っていて、影ながら錦のことを見守っているのだけれど、ある人物に差し金によって、錦と一磨が再会してしまうところから物語は始まります。

 後はいろいろ紆余曲折あって、最後はハッピーエンドになるんですが、個人的にはそうするのがよくある風潮にあるとはいえ、最後の最後で、一磨と錦が再会した時の状況に少しだけモヤモヤしたかなーと思います。
 一磨と錦にとってはそれでいいのかもしれないけれど、一磨の実の親とそうじゃない親にとってどういう気分なんだろうかなー……と。

 まぁ、本人たちが納得ずくなのであれば、私がとやかく言うことでもないんだろうな、とは思います。
 ちょっと今の風習には合わないラストだったけれど、時代を考えれば十分ありだったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(BL)
感想投稿日 : 2013年2月16日
読了日 : 2013年1月16日
本棚登録日 : 2013年2月16日

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