お嫁さんになりたい (幻冬舎ルチル文庫 く 1-5)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2008年11月17日発売)
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感想 : 9
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 未希は、幼い頃から女の子として育てられてきた。
 それというのも、未希の母親借金のカタにはあるお金持ちの愛人として無理やりさせられて、その男が亡くなった後、その男との間の子供である未希をつれ、その男の正妻から逃げるために、金で戸籍を買い、たまたま買った戸籍が母娘のものだったため、未希を女装させて育てたのだった。

 ところが、その母親が亡くなった直後、未希は正妻に見つかり、以来、取り引き相手への『賄賂』とするために、未希を育ててきたのだった。

 未希は「育ててやってるんだから自分の言うとおりにしろ」という正妻の言葉に、少しも逆らうことなく、大きくなり、ある日突然、ある人間への『愛人』となるように言われ、家を追い出された。
 だが、送り込まされた先は、未希が別荘で過ごす間に一目ぼれしてしまっていた相手・門倉秀治の家だった。

 その日、野良猫の親子に餌をあげようとしていた未希を手伝ってくれたのが、秀治だった。
 そしてその猫を「飼い主を探してあげる」と言ってくれた秀治の優しさに、未希は胸をトキメかせたのだった。

 ところが、たまたま玄関まで迎えに出てきてくれたのは秀治で、秀治の顔を見た瞬間、舞い上がった未希はついうっかり「お嫁さんにしてくださいっ!」と言ってしまう。
 けれど、正妻から渡された手紙を見た途端、秀治は厳しい顔になり、未希に家に帰るように告げる。
 未希はせっかく秀治と一緒に暮らせるようになるかと思い、喜んでいた気持ちを打ち砕かれ、ショックで涙をこぼしてしまう。
 それを見た秀治に事情を尋ねられ、正直に話すと、今度は再び難しい顔になってしまう。
 そして、そのまま秀治の家にいるように、と言われ、未希の立場を何とかしてくれるという。

 その晩、「ずっと秀治と一緒にいたい」という想いから秀治の部屋に忍び込んだ未希が、男だとわかった秀治は難しい顔になってしまう。
 実は秀治には「ゲイ」だという噂があって、それを信じた未希は「それなら自分でも」という思いを抱いていたのだが、それも間違った情報だということがわかり――

 という話でした。
 虐げられて育った未希が、男としての自分を取り戻し、徐々に「自分らしく」なりながらも秀治を一途に慕う話でした。

 何よりも未希が随分かわいく描かれています。
 今まで虐げられて育ったせいで「普通」という感覚がわからない。
 でも、その中でできることをしっかりやりながら、自分の運命には文句も言わない。
 そして実は頭の回転も悪くない――そんな子で。

 世間に「男の子」として出たばかりの未希を気遣って、あれやこれやと理由をつけて、なかなか手出しをしようとしない秀治に最後は諦めたふりして一気に押し切るところとか、すっごいかわいい。
 一途な男の子ってかわいいですよねー。
 よかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(BL)
感想投稿日 : 2012年11月21日
読了日 : 2012年11月21日
本棚登録日 : 2012年11月21日

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