お医者さんにガーベラ (プラチナ文庫)

著者 :
  • フランス書院 (2010年1月8日発売)
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 主人公はお医者さんの甫。
 彼は、自他共に厳しく、整形外科からポストに空きが出れば、戻してくれる、という約束でリハビリテーション科に出向することになった。
 当然、「期限付き」ということではあったけれど、完ぺき主義の甫は、手を抜くことはしなかった。
 今までの古い体制を改革し、新しい技術や機械を導入し、リハビリテーション科の重要度を格段にレベルアップさせたのだった。
 けれど、その甫の厳しさが他のスタッフの負担を大きくしているのもまた事実であり、一方では反感を買っていた。
 けれど、甫としては「結果を出している以上直接甫に文句を言ってくるやつはいないだろう」と思っていて、意に介してはいなかった。
 そんな甫にも、頭の痛い問題が一つあった。
 溺愛していた弟が、医大を中退し、パン屋を始め、あろうことか、自分の部下と恋仲である、というのである。
 そのことから視線を逸らすようにしていた甫だったが、いつまでも視線を逸らしているわけには行かず、渋々、弟の様子を見に行くことに。
 そこには、弟によりそう自分の部下の姿があり、そのことに大事に守ってきた弟の自立を感じ取った甫は、その足で行きつけのバーに行き、したたかに酔っ払う。
 そして行き倒れた甫を、介抱してくれたのは、病院に出入りもしている花屋の九条であった。

「あなたを慰め、甘やかす権利をください」と優しく甫を介抱してくれる九条だったが……
 という話でした。

 うーんっと。
 とりあえず、弟の話を後に発行する予定なのであれば、こんなに弟カップルを前面押しにする必要があったのだろうか……? と頭を抱えてしまう。
 もうちょっと甫の人となりを説明して、病院の中での問題を前面に押し出してから、弟の問題……というようにした方が、物語としてはスムーズだったんじゃないんだろうか……? とちょっと疑問に思ってしまいました。
 どう考えても、この順番は不自然。
 最初から、弟の恋人を目の敵にしているところから始まって、弟の過去も具体的な思い出は何も語られず、「そんな程度で……」と思うようなことで、強かに酔っているところに花屋登場……では、さすがにご都合主義すぎるというか、設定ありきの、キャラクター後付感がすごいです。
 作者さんの中では物語が出来上がってるんだと思うんですが、ついてけないまま、物語が始まって終わった感じですねー。
 九条のキャラクターとか、甫に対する甘やかし方とか、すっごくほのぼのしてて好きなんですけど、そういうところがうまく活かしきれてないのが、本当にもったいないなあ……と思わされてしまいました。

 伏線なら伏線でもうちょっとひそませて欲しいし、そうでないなら、弟カップルを前面押しにしてもよかったと思うんですけどね……もったいないです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(BL)
感想投稿日 : 2015年5月29日
読了日 : 2015年5月28日
本棚登録日 : 2015年5月29日

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