量子論の基礎: その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ 別巻2)

著者 :
  • サイエンス社 (2004年4月25日発売)
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感想 : 26

 この分野の入門書によくある、量子力学の歴史的背景、つまり(例えば、Planckの量子仮説が唱えられるもとになった黒体放射の問題などの)古典論の行き詰まりについては書かれておらず、まず理論の枠組みとして幾つかの公理を認めてしまい、そこから出発する書き方。量子論に至るまでの科学者たちの奮闘も読んでいて確かに面白いのだが、本書のようなスタイルの本もあって良いと思う。何より要らぬ混乱をしなくて済み、本質的な部分が見通しよく理解できる。また、どうせ大学の講義では歴史から話し出すのだから、参考書として本書を読めばバランスが取れるという考え方もあると思う。
 扱っている内容としては、ベルの不等式に一章を割いているのが特徴的だろうか。一方で、他の入門書ではよく理論の応用として解説されている水素原子の電子状態に関する記述は無し。随所に練習問題が配置されており、巻末の解答も結構詳しい。値段が2000円ぐらいと理学書にしてはお手頃価格でこの内容は素晴らしいと思う。
 何度か言及されている、本書の続編「量子論の発展」(仮題)は一体いつ出版されるのだろうか…

序章
1 古典物理学の破綻
2 基本的枠組み
3 閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論
4 有限自由度系の正準量子化
5 1次元空間を運動する粒子の量子論
6 時間発展について
7 場の量子化—場の量子論入門
8 ベルの不等式
9 基本変数による記述のまとめ
付録A 複素数と複素ベクトル空間
付録B 行列
付録C 問題解答

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 4 自然科学
感想投稿日 : 2021年3月4日
読了日 : 2021年3月4日
本棚登録日 : 2020年8月29日

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