『単独行の加藤文太郎』と呼ばれる登山家が、どのようにして山に導かれ進んでいくのかを追った物語。
序盤の神港造船所の技術研修所に、研修生として五年間在籍している間の話は非常に面白かった。木村敏夫は影村一夫からの嫌がらせや罵倒に嫌気が差し出ていく。地図の読み方などを教えてくれた新納友明は肺結核にかかり死に、金川義助は主義者として逮捕され…。彼と共に過ごす人達は何らかの形で不幸な道を辿ってしまい、加藤は俺といない方がいいと考え、孤独に生きていく。
冒頭からずっと彼を気にかけている外山三郎の存在も大きいと思う。山岳会に入らないかと仕切りに勧めるが、加藤はそれを拒絶する。しかし、外山から本を借りたり、会食に招かれれば訪ねて行ったりと、どこかしらで繋がり続けている所が、加藤は本当は誰かといたい気持ちもあることに気付かされる。
剣沢小屋の6人のパーティーに拒絶されてもついていこうとする加藤のシーンは心惹かれた。単独行を好んで進めた部分もあるが、どこかで誰かと共に登山をしたい気持ちもある。けれど自分の登山速度が速すぎることや、人とのコミュニケーションをうまくとれないことも相まって、結局は孤独に、1人冬山を登っていく姿はとても印象に残っている。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月11日
- 読了日 : 2023年10月11日
- 本棚登録日 : 2023年9月14日
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