誘拐 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-7 スペンサー・シリーズ)

  • 早川書房 (1989年2月1日発売)
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感想 : 10
5

何年かぶりでの再読。
スペンサー・シリーズの第二作目。

運命の女性、スーザンと知り合います。
「スーザン・シルバーマンは美人ではないが、肌に感知するもの、肉体的な実態感があって(略)。黒い髪が肩まで垂れ、肉が薄く浅黒いユダヤ人の顔の頬骨が高い。背が高く、5フィート7インチくらいで、目が黒い。年は見当をつけにくいが、知的に成熟した感じから30は過ぎているようだ。」(P.43)

ホークは未だ出てきません。

ボストン警察のマーティン・クワーク殺人課の警部補、フランク・ベルソン部長刑事、州警の警部補ヒーリーとは前作と本作で面識を得ます。


残念なのは後半期に於いては、男女差別(スペンサーは我慢している節もある)は勿論、あらゆるマイノリティーに理解を含め、人に依っては信頼・敬愛を示すスペンサーですが、本作に於いては未だ・・
「四角いドーナツみたいに、気味の悪いホモだよ」
・・なんて様なセリフが散見されています。

前作はYMCAのジムでしたが、ヘンリー・シモリのハーバード・ヘルス・クラブが登場します。(~P.186)

シリーズの中の人気作は、「初秋」が、ほぼ断トツで人気を集めています。
勿論わたしも「初秋」、それに続く「晩秋」ともに好きですが、もっとも好きな一冊をあげろと言われたら、躊躇わずにこの「誘拐」をあげるでしょう。

・スペンサーとスーザンが出逢い理解を深めていく。
・人が一人しか死なない。
・最後に分かる息子ケヴィンと両親の愛。
・悪党ヴィックを憎みきれぬように書かれている著者の優しさ。
・ドアを開けたたまま去る、ラストのスペンサー。

所謂、ツボを捉える挿話がテンコ盛りの一作です。

スペンサー・シリーズを未読の方、前作【ゴッドウルフの行方】、本作【誘拐】を読んでみてください。
巧く嵌ることができれば、その後三十数冊の愉しみが得られますょ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ロバート・B・パーカー
感想投稿日 : 2012年6月1日
読了日 : 2012年6月1日
本棚登録日 : 2012年5月31日

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