さがしもの (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2008年10月28日発売)
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本棚登録 : 8628
感想 : 844
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2023.8.21 読了 ☆9.6/10.0

本がもっと愛おしく、大切に、大好きになれた、そんな一冊。

"本との関係というのは、どこまでも個人的な行為である。スポーツをする、ゲームをする、レストランで美味しいものを食べる。温泉に入る。そういうことと本を読むということは、あまり変わらないことのように思える。スポーツしなくても、ゲームしなくても、美味しいものを食べなくても、温泉に入らなくても、なんら問題なく人は生きていけるが、けれどそこに何かべつのことを求めて、それらのことを人はする。その中に、本を読むという行為も含まれている。そうして、本を読むのは、そのような行為の中でもっとも特殊に個人的だとわたしは思っている。そう、だれかと一対一で交際するほどに"

あとがきエッセイの角田さんの言葉

"恋人は一人であることが望ましいけれど、本の場合は、三人、四人、いや十人と、相性の合う「すごく好き」な相手を見つけても、なんの問題もない。そんな相手は増えれば増えるほど、こちらはより幸福になる"


〜〜〜〜〜印象に残った言葉〜〜〜〜〜


"「人間は、本を読むために生まれてきた動物である」

何を大袈裟なと思われるかもしれないが、そんなことはない。
人間は、乳幼児の段階で、母親が膝に抱いて本を持つと、ページを指でめくろうとするらしい。いま見ているページの先に何かあるのかを、知りたくなって手が本に伸びていく。それは人間の本能なのだ" p.230


"変わっているのは本ではなくて、わたし自身なんだと。家を離れ、恋や愛を知り、その後に続く顛末も知り、友達を失ったり、また新たに得たり、うまくいかない物事と折り合いをつける術も身につけ、けれどもどうしても克服できないものがあると日々実感し、そんなふうにわたしの中身が少しずつ増えたり減ったり形を変えたりするたびに、向き合うこの本はガラリと意味を変えるのである" p.23


"私、子供の頃におばあちゃんに聞いたことがあるの。本のどこがそんなに面白いの、って。そしたら何を聞いているんなって顔で私を見て、『だってあんた、開くだけでどこへでも連れて行ってくれるものなんか、本しかないだろう』って言うんです。祖母にとって、本は世界への扉だったのかもしれないですね" p.164


"死ぬのなんか怖くない。死ぬことを想像するのが怖いんだ。いつだってそうさ。出来事より、考えの方が何倍も怖いんだ" p.183


"出来事は、起こってしまえばそれはただの出来事なのだ" p.185

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月21日
読了日 : 2023年8月24日
本棚登録日 : 2023年8月21日

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