初カルヴィーノ。カバーは単行本のほうが素敵。
マルコ・ポーロがフビライ汗に奏する諸都市の物語。征服を繰り返し版図を広げていく帝国を誇る一方、すでにその栄光も崩壊の過程にあることを察し絶望する皇帝の慰めがマルコ・ポーロの報告にある諸都市の様相なのだと、冒頭すでにアンビヴァレントな感慨が物語全体を立体化していく趣がある。あるいは過去・現在・未来を重ね合わせ一点に収束させる眼差しだろうか。
都市をそういくつも過ぎゆかないほどに、フビライ汗自身、マルコ・ポーロの報告はいずれも似たり寄ったりで交換可能と気づいてしまうところから、このお話が(もちろん)単に都市の描写を主眼とした幻想譚ではないのだとわかる。ではどこへ向かうのか。気にするともなく語りに身を任せてゆくほどに、都市の幻想性、事物と語る言葉との乖離、物語るという行為そのものが俎上に上がってくるのに驚かされた。両者の丁々発止のやりとりを交え、さらにいくつもの語りを鏤めてそれをやるあたり、飄々と知的で刺激的。いったい何を考えてこれを書いたんだろう。詩のようでもあり現代劇のようでもある。
忘れて思い出した時に繰り返し読んで、さらに面白くなる本かもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年2月11日
- 読了日 : 2021年7月10日
- 本棚登録日 : 2021年7月10日
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