不思議の国のアリス (挿絵=ラッカム)

  • 新書館 (2005年12月5日発売)
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本棚登録 : 281
感想 : 30
5

挿絵に惹かれて購入を決意。色々な版があるお話なだけに、何かしら特別な1冊として欲しかった。他のお話と抱き合わせでない独立した1冊で、大事に愛でたくなるような1冊。書籍情報社のオリジナル版もちょっと気になる。

挿絵は期待通りの素晴らしさ。繊細で、大真面目に剽軽な愛嬌を備えて、写実と想像力に支えられた幻想性があってとても素敵。ヘンテコなお話に似合いの突拍子のなさや怪奇性がまたいい。そしてすごいなと思うのは、アリスも、アリスと一緒に泳いだ動物たちも、キノコの上の青虫も、チェシャ猫も、トランプの面々もグリフォンもウミガメモドキも、別々の絵でもちゃんと同じ物語世界のキャラクターに見えること。今まであまり気にしたことがなかったけど、きっと完成までに色んなイメージが作られているんだろうな。
訳も滑らかでわかりやすく、註が後ろにまとめられているのも好印象。このお話は本編と同じ頁で註を見たい気はしない。

今になって読むと、アリスから冒険譚を聞いたお姉さんの感慨がとても沁みる。ちなみにこれ、ルイス・キャロル本人の感慨が少女に委託されている形だと思うのだけど(おかげでお姉さんがものすごく大人びて見える)、あくまで本人とわかる形で描かないのは、その場面がすでに不思議の国を離れているからだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年7月25日
読了日 : 2020年7月19日
本棚登録日 : 2020年7月25日

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