花森さん、しずこさん、そして暮しの手帖編集部 (NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ 花森安治・大橋鎭子との日々)

著者 :
  • 暮しの手帖社 (2016年6月14日発売)
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感想 : 7
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著者が暮しの手帖社に入社した1960年から花森編集長が亡くなる1978年までに送った編集者人生と編集部の日常を綴った年代記です。
この本では暮しの手帖編集部の外にも内にも妥協しない厳しい姿勢が元編集者の目からこれでもかと活写されているのと同時に、社員を家族的に温かく包みこもうと心がける経営方針についても筆が割かれています。
ただ、労組結成未遂騒動が起きたことに象徴されるように、それらの業務や経営の方針には前時代的な要素があるのは否めません。花森さん亡き後、著者が社長のしずこさんと袂を分かったのにはそういう事情も影響しているのかも?と推察します。
著者が花森さんの揺るぎない編集者魂への敬服と、花森さんとは異なる魂を持つ編集者としての自己主張との間で葛藤していく描写を目にしつつも、読者としては「なかのひとりはわれにして」のポリシーでひとつの雑誌の発行を守り、筋を貫いていく花森さんの、しずこさんの、そして編集部の生き方(としか言いようのない生命体的な道行き)の前に襟を正さずにはいられません。
今日の暮しの手帖社の状況については知る由もありませんが、この編集部への愛憎入り混じった本(もちろん愛に満ち溢れてはいますが)を出版したところに、同社に受け継がれている魂の存在を感じ取っています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年7月31日
読了日 : 2016年7月31日
本棚登録日 : 2016年7月31日

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