小説家による江戸期財政通史。ただ資料の少ない世界のこと、金銀の通貨史、薩摩藩の財政逼迫、幕末開港に伴う通貨混乱、にフォーカスした経済読本の体裁になっている。
江戸時代は、中世的な封建制を政治的基礎にしながら集権的であり、米穀のみに課税しながら商工業が発達し、大型船舶をもちながら限定貿易という、経済史的に特殊で面白い時代だったと言える。武士階級の消費が町民階級を育て、参勤交代が街道往来を活発化させ、金銀の改鋳でマネーサプライを拡大させたのだから、武士の堕落と儒教的な観点から批判される時代性も、マクロ経済で見れば政府部門がポンプ役となり済成長を促したのだと評価できる。
本書の初版は20年前。昔は江戸時代の歴史を政治史として、儒教的な道徳観から論じるのが主流だったが、時代を経て経済史にも光が当たるようになり、例えば井沢さんなんかも積極的に採り上げている。明治以降の西欧化は江戸時代の蓄積なしには考えられない。この分野に興味を持てた一冊。
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2009年7月1日
- 本棚登録日 : 2009年7月1日
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