私が初めて三秋縋さんの小説に接したのは多分高校生の時だったと思います。 3日間の幸せのウェブ連載版に夢中になって夜通し読んだ記憶があります。 その後、今回読んだ「~電話をかけてきた場所」を最後に彼の出版書籍は全巻読みましたが、年を取ったせいか短所が先に目に写りました。
論理的に説明できない超常現象を素材にした以上、これに対する設定は最大限に言及を自制しなければ作品全体の蓋然性を落とします。 ところが、本作で何かの事件が起こるたびに疑問の電話がかかってきて、これは読者の興味をそそるのではなく、むしろ作品への没入を妨げる要素として作用しました。 そこにヒロインの記憶喪失のようなあまりにも突拍子もない事件が起き続け、途中で集中力を曇らせます。 記憶喪失になったキャラクターを見て「またこれか…」と思う人が私一人だけではないでしょう。
短所だけをずっと指摘しましたが、こうであれああであれ結局この種の本で最も重要なことは「面白いか」であり、その面では悪くない本です。 韓国には不幸ポルノ(英語ではmisery porn)という言葉があります。 検索してみたら日本には感動ポルノという言葉がありましたが、似たような感じの単語です。 もちろんポルノが入いるほど卑下的な意味が強い表現ではありますが、これに対する根強い需要があることを否定してはいけません。 もちろん私もその需要者の一人です。
本作以後にリリースした「君の物語」以来、三秋縋さんはほぼ5年近いかなり長い休息期を持っています。 長い間構想してきただけに、次の新作ではさらに発展した姿を期待します。
- 感想投稿日 : 2023年3月19日
- 読了日 : 2023年3月19日
- 本棚登録日 : 2023年3月15日
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