「アンタ、大切な人はおるね?」
この言葉にはっとした。今の世の中、大切な人がいない人間が多すぎる、そんな言葉がすごく、突き刺さった。
なんというか、読んでいて心がずしっと重くなった。この話のタイトルである、悪人というのはだれだったのだろう。ひとを殺した祐一が、そりゃあいっちゃん端的にそれを表していることはわかるのだけど、一概にはいえない。祐一がこの行為に及んだ背景には、たくさんの、なんというか、そこに至るものがあったと思うのだ。様々なものが絡み合って、あれが起こってしまったと思うのだ。だって、佳乃があそこで祐一に対して素直になっていれば、あの場所で殺されることはなかったはず。
光代の、あの人は悪人やったんですよね?っていう言葉がまた、がつんと胸にきた。わたしには、自分にいい聞かせているようにしか思えなかった。あれが一時の熱ならば、こんなに苦しくなることはなかったのに。
所々に入る、逃げてはならない、という言葉がつらくて、房枝の立ち向かう姿に泣いてしまった。
あと、「人の気持ちに匂いがした」っていう表現がほんとに、いい。
(420P)
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
作者:や行
- 感想投稿日 : 2012年1月22日
- 読了日 : 2011年6月15日
- 本棚登録日 : 2012年1月22日
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