オウム事件 17年目の告白

  • 扶桑社 (2012年12月17日発売)
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感想 : 40
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「ああいえば上祐」が赤裸々にオウムと社会について、社会の中のオウムについて、オウムと自分について語っている。
自分はオウム関連の本は殆ど読んでなくて、知っている情報は当時の報道ぐらいなものだけれど、それでも登場人物の相関図と心理的機敏がビンビンに伝わってきた。

麻原は俗物だという言説もあるけれど、すくなくともアレだけの人数の組織を組閣できるカリスマは持っていたのだと思う。それを神秘主義とイリーガル・ドラッグで洗脳していったのだけれど、あれはドラッグを利用して…という風に特別に扱うのはキケンだと思う。

上祐は現在「ひかりの輪」という団体を主宰している。これは智慧を求めるのと言う意味では宗教であるが、特定の何かを信仰するという意味では宗教ではないと説く。サリン事件の被害者と賠償契約を履行し、現在も麻原妻、長女らを中心にした家族が暗躍していて麻原信仰の機運が高まっているという。上祐はそこからの脱退の手伝いもしているそうだ。


上祐の書籍はいままでにもあったし、対談は散々企画されたという。それらを総て断った有田芳生が検証と対談役を引き受けている。これは目次を見て上祐の親子関係が触れられているのを詠んで快諾したのだ。

取材を重ねる上で有田はオウムに於ける父性に着目する。本来得られたはずの父性を求めて若者は教団に出家したのではないかということだ。

オウム事件は麻原彰晃の誇大妄想、被害妄想に端を発していると思われる。その麻腹の原点を探ると全盲の兄に対しての服従、盲学校において自分だけが見えるという立場。親との角質などが三つ子の魂的に顕れている。


これだけの事件を踏まえ、未だに検証しきれていないという思いを強くした。
特にいまは宗教のように分かり安い教義ではなく新自由主義や排外主義など根深い空気で固まっているカルトが跋扈している。

日本はオウムを総括しきれていない。いまこそ! 再犯、再発の防止を!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月20日
読了日 : 2013年4月25日
本棚登録日 : 2018年11月20日

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