キネ旬総研エンタメ叢書 「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方

  • キネマ旬報社 (2011年8月11日発売)
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感想 : 20
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町山智弘、シネマハスラー・ファンにオススメ!
何故、その映画がオモシロイのか或いはつまらないのかを論理的に語る手引きとなるだろう一冊。

<blockquote>良い「ストーリー」を感動的に語る「テリング」。これが「おもしろい」エンタテインメントの構造なのです。</blockquote>
「テリング」とは感情を表に出す行為。音楽や美術、役者自体の魅力などが映画での「テリング」に当たる。これは見る人の好みに左右される。
対して「ストーリー」は誰もが納得できる物でなくては面白みがない。

そこで本書では序破急、起承転結を緻密にした13フェイズ構造というストーリーの組み立て方を紹介している。
<blockquote>■第一幕 【対立】 0.背景 1.日常 2.事件 3.決意
■第二幕 【葛藤】 4.苦境 5.助け 6.成長・工夫 7.転換 8.試練 9.破滅 10.契機
■第三幕 【変化】 11.対決 12.排除 13.満足</blockquote>

基本的に本編中に「変化」するのが主人公であり、「つまらない」映画の多くはこの主人公の描き方が散漫になっている。但し、「おもしろい」映画の中には裏の主人公が設定されている場合がある。例えば『ソーシャルネットワーク』の主人公は「フェイスブック」であり、『悪人』では被害者の父がそうである。
これら主人公が変化する物語が映画の面白みを分析する上で鍵となる(映画評論家・町山智弘氏の方法論はこの物語とその背景を丁寧に読み解くというものだ)。




論理的に「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方を論じているのに、著者の経験上でも語っているのが面白かったのでメモ。

●海外の辛口レビューでの高評価。
●予告編で深い破滅の淵、危機感を描いている。
●「売り」の映像がないのに上掲の13フェイズが予告編で分かる。
●リピーター・キャンペーンを行っている。→作品中に伏線を巧妙に仕込んでいる。
●製作が順調なのになかなか本編映像を予告編で見せない。
●少数の「見せ場」カットをじっくりみせてしまう映画、他の作品のBGMを予告編で使っている映画、脚本化・監督の名前を殆ど出さない映画、他のヒット作の名前を「売り」に出す映画は「つまらない」傾向。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月20日
読了日 : 2012年2月14日
本棚登録日 : 2018年11月20日

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