フェアリー・プリンセス夢迷宮への片道切符 上 (MIRA文庫 JK 2-1)

  • ハーパーコリンズ・ジャパン (2012年7月13日発売)
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感想 : 36
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 16歳の誕生日、妖精界へさらわれた弟を助ける為にクローゼットの奥の扉を開け妖精界へ旅立ったミーガン。彼女は弟を救い出し無事に帰ってくることができるのか。
 と、少女の冒険譚と説明しようとすればできてしまうが、得体のしれない妖精の総出演、喋る猫、氷の剣を操るうつくしい王子など。揃っていて欲しい材料がすべて描写されており、16歳の少女が主人公ならこうでなければというドキドキとワクワクで楽しませてくれる。
 特に後半の王子とのやり取りなど、床に転がってジタバタしながら読んでしまった。なんというか、久しぶりに若者のストーリーを読んだので、20代後半であるわたしは妙に照れてしまったのだ。けれど、誰もがドキドキしたりできるのが、小説の素晴らしいところ。じぶんと切り離して都合よく楽しんだっていいのである。

 日本で暮らすわたしたちとは習慣などが違っても、自分の力の限界を感じる10代の切なさが冒頭に置かれているので、自然と彼女を応援している。ミーガンと同じ年頃であれば、もっと共感して抱え込むように読んでいたかもしれない。
 いつの間にか空想より楽しくて、楽ちんで、仲間外れにされない方法を覚えてきたけれど、もっとじぶんのなかに存在する怪しげな世界を肯定してあげてもいいかもしれない。肯定してあげて欲しいとおもう。その肯定する力があればこそ。現実の世界だろうがファンタジーの世界だろうが、生きていける可能性は広がる。

 作者と読者と、これまでの優れた想像力によってすべてを準備されていたかのような舞台で、しかしミーガンは先の読めない世界を行く。猫の言う「つねに選択肢はあるものだよ」とのことばのように、じぶんで選択して弟を取り戻して欲しい。

 さあ、下巻へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2012年7月16日
読了日 : 2012年8月18日
本棚登録日 : 2012年7月12日

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