クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年4月15日発売)
3.83
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本棚登録 : 265
感想 : 20
3

 現在の西尾維新の自由なイメージと比べるとスタンダードなミステリと言っていいだろう。しかし、この感想は現在の目線でこの作品を評したからこそのものなのかもしれない。発表された2002年の他のミステリと比べれば型破りな作品の一つだったのだろうか。現在、意外と普通だと思うことこそが、西尾維新の独自性が綿々と続いていることを伺わせる。
 天才が集められた孤島が舞台ということで、必然的に「天才とはなにか」について語られていくのだが、天才を描くことができているかという点に置いてはやや怪しい部分は多い。どうしても同じように天才を描いた『すべてがFになる』が思い浮かび、比較すると本作の天才の概念は抽象的かもしれない。しかしその分キャラクター性の余白はかなりあり、西尾維新らしいキャラクターの自由度の高さは感じられる。「変人」は間違いなく描けているだろう。
 頭脳のレベルとしてはむしろ一般人の発想の延長に、全てが収まっていて、故に意外にもしっかりと固められたロジック面が楽しめる。発生した密室や首切りの謎は真面目に論じられて、合理的な解決に向けて読者は推理することができる。
 最終的な解決も含め、クローズドサークルの良作として十分楽しめる。
メフィスト賞応募時のタイトルは『並んで歩く』だったという。この作品のテーマの一つをよく体現した良い題だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ・推理
感想投稿日 : 2020年6月24日
読了日 : 2020年6月5日
本棚登録日 : 2020年6月24日

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