国境 上 疫病神シリーズ (文春文庫) (文春文庫 く 9-10)

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  • 文藝春秋 (2014年12月4日発売)
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気が付いたら今月は絵本以外は黒川博行しか読んでいない。最初に読んだのが『後妻業』。仕事先の中学校の図書館に入っていたからだ。中学生が読んでいいか悪いかはともかく、まあ、理解できないであろう人間の剥き出しの欲望が、テンポのいい大阪弁でこれでもかというくらい抉り取られていて、読み始めたら止まらない。

都合、4冊目にあたる本作は、直木賞(悲願の!)を受賞した『破門』のいわゆる「疫病神シリーズ」第2作目にあたり、シリーズ最高傑作の呼び声も高い大作長編である。シリーズ2作目にして、主な舞台が北朝鮮て・・・。(一作目の『疫病神』は読んでないけど)いきなりハードルあげすぎなんじゃないの?と、ハラハラしながら読みました。

「疫病神コンビ」の桑原と二宮、それぞれの理由で北朝鮮に逃げた在日韓国人の男を追って、二度も渡航することになる。がっちがちに監視された社会主義国家の中では、もちろん自由行動など許されない。公安の目をかいくぐって、時には賄賂を掴ませながら、桑原と二宮はターゲットに近づいていく。
二度目の渡航は中国との国境を越えて密入国。しかも、タイムリミットも迫っている。入ったはいいがどうやって戻ってくるのか・・・(『破門』を先に読んでいるので、そのあたりのことは知っていたけれど)。しかし、物語はそこで終わるわけではない。

時代的にはやや古く、たとえば阿倍野の旭通商店街は阿倍野・天王寺駅前の再開発(阿倍野ハルカスの建設等)で、すでになくなってしまっているし、藤井寺駅前の藤井寺球場も近鉄バファローズの消滅と共に今は大学の敷地になってしまっている。聖地詣でがしたい人(そんな人がいたとして)にとっては寂しい話かもしれない。

【つづきは下巻で!】

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2017年11月28日
読了日 : 2017年11月28日
本棚登録日 : 2017年11月28日

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