重病の子供からプロ棋士の妻に届けられた手紙。<10歳の少年が教えてくれた。本当の「優しさ」っていうのは、凄いんだ。>
私小説というカテゴリになるのだろう。
しかし、私小説とノンフィクションの違いは何なのだろう。大崎善生を「ドナウよ、静かに流れよ」で初めて知った私にとっては、ずっと疑問に感じていたことだった。
感覚はわかる。
「優しい子よ」はあまりに作者に近すぎて、小説というフィルター、もしくは紗幕を通さなければ、語ることができなかったのだろうと。
ならいっそ、全く別の架空の人物、町を作り上げて…。
大崎善生は、<真実>の強さを信じているのかもしれないと思った。
自分自身の小ささを客観的にみることができるからこそ、<真実>の前にはただひれ伏すしかないと思ったのではないだろうか。
そして、少年から大崎善生一家に渡された「優しさ」のバトンは、確かに私の心の中にもきた。きっと、こうやってたった10歳で逝ってしまった少年の「優しさ」は地を満たしていくのだろう。
そうであると、強く信じたい。
信じている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
邦人作者名 あ~お
- 感想投稿日 : 2010年6月25日
- 読了日 : 2010年6月25日
- 本棚登録日 : 2009年10月25日
みんなの感想をみる