([お]3-1)優しい子よ (ポプラ文庫 お 3-1)

著者 :
  • ポプラ社 (2009年10月10日発売)
3.40
  • (9)
  • (17)
  • (28)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 238
感想 : 21

 重病の子供からプロ棋士の妻に届けられた手紙。<10歳の少年が教えてくれた。本当の「優しさ」っていうのは、凄いんだ。>

 私小説というカテゴリになるのだろう。
 しかし、私小説とノンフィクションの違いは何なのだろう。大崎善生を「ドナウよ、静かに流れよ」で初めて知った私にとっては、ずっと疑問に感じていたことだった。
 感覚はわかる。
 「優しい子よ」はあまりに作者に近すぎて、小説というフィルター、もしくは紗幕を通さなければ、語ることができなかったのだろうと。
 ならいっそ、全く別の架空の人物、町を作り上げて…。
 
 大崎善生は、<真実>の強さを信じているのかもしれないと思った。
 自分自身の小ささを客観的にみることができるからこそ、<真実>の前にはただひれ伏すしかないと思ったのではないだろうか。

 そして、少年から大崎善生一家に渡された「優しさ」のバトンは、確かに私の心の中にもきた。きっと、こうやってたった10歳で逝ってしまった少年の「優しさ」は地を満たしていくのだろう。
 そうであると、強く信じたい。
 信じている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 邦人作者名 あ~お
感想投稿日 : 2010年6月25日
読了日 : 2010年6月25日
本棚登録日 : 2009年10月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする