可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2004年9月16日発売)
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■「犬を連れた奥さん」
「彼はいつも女の目に正体とはちがった姿に映ってきた。どの女も実際の彼を愛してくれたのではなくて、自分たちが、想像で作り上げた男、めいめいその生涯に熱烈に探し求めていた何か別の男を愛していたのだった。そして、やがて自分の思い違いに気づいてからも、やっぱり元通りに愛してくれた。そしてどの女にせよ、彼と結ばれて幸福だった女は一人もないのだった。時の流れるままに、彼は近づきになり、契りをむすび、さて別れただけの話で、恋をしたことはただの一度もなかった。・・・・・・それがやっと今になって、頭が白くなりはじめた今になって彼は、ちゃんとした本当の恋をしたのである―――生まれて初めての恋を。」
ダブル不倫でも恋は恋。陽子と電子が、地球と月が、男と女が引かれあうのは不思議だけれど自然なこと(ただし恋の場合に限って言えばたいていすぐ冷める。よって恋はよけいに不思議……)。

■「イオーヌィチ」
「かつては自分にとってあれほど懐かしく大切なものだった、黒々とした家や庭を眺めやって、彼は何から何まで――ヴェーラ・イオーシフォヴナの小説のことから、猫ちゃんの騒がしい演奏のこと、イヴァン・ペトローヴィチの駄洒落のこと、パーヴァの悲劇の見得のことまでいっぺんに思いだして、町じゅう切っての才子才媛がこんなに無能だとすると、この町というのは一体どんな代物なんだろうと考えた。」
一体どんな代物? しかしそれは自分とて同じこと。長年の業務上の功労によりおのずとお歴々の一角を占めていようと、容姿は醜く肥え太り、心は狷介に凝り固まっている。

■「可愛い女」
"Kawaii" means cute, adorable, childlike, lovely and so on.
And when we say "kawaii onna", it means obedient, somewhat goofy woman we want to protect.
100年以上前のロシアのお話だが、うん、たしかにこの女、かわいい。そしておばさんになってからも。世界中のすべての「可愛い女」ばんざいだ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2020年10月15日
読了日 : 2020年10月15日
本棚登録日 : 2020年10月15日

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