中編「告別」短編「形見分け」 の2作を収録。表題作は語り手の友人・上條の葬儀のシーンから始まり、ちょうどその1年前に自殺した上條の娘・夏子の葬儀の回想、さらにその夏子の自殺の原因を作ったと思われる上條と金髪美女の愛人とのエピソードまで、時系列を逆にたどっていくような形で進んでいく。
生きるとは何か、死とは何か、愛とは何か、ストレートに問うとちょっと恥ずかしいような、しかしこのうえなく文学的なテーマを福永武彦は真っ向から掲げてくることが多いけれど、本作もまさにそうでありながら、その苦悩の原因が結局「不倫」であり、家族がありながら別の女を好きになった男がその苦悩から何を見出そうとも、結果「言い訳」にしかならないとことがちょっと女性読者的に不満。
「形見分け」の主人公は記憶喪失の画家。別荘のようなところで甲斐甲斐しい妻と二人きりで暮らしている彼がなぜ記憶を失ったのかの真相にたどりつく構成は少しミステリー要素もあって面白かったけど、これまた結局真相が「不倫」なのはいただけない。おいおい、またかよ。アプローチは違うけれど二作とも同じ結論だった印象。
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- 感想投稿日 : 2016年11月28日
- 読了日 : 2016年11月26日
- 本棚登録日 : 2016年10月31日
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