以前読んだ書評エッセイ(誰のだったか忘れた…)で、絶賛されていたのでいつか読みたいと思っていた岸田今日子。どうしても女優さんとしての印象のほうが強いけど、お父さんは劇作家の岸田國士、お母さんも翻訳家でしたっけ?ある意味文学的サラブレッド。そりゃ文章センスも良いわけだ。
こちら短編集ですがどれも面白かった。幻想的でエロティックで、オチで一ひねり効いていて、初期の倉橋由美子あたりに近い印象。
「オートバイ」は暴走族の若者の話かと思いきや、マンディアルグの『オートバイ』の思い出とからめて思いがけないオチがついててビックリ。「二つの月の記憶」は幼い息子が仮面ライダーの人形で遊ぶのを眺める母親がふと気付く過去の幻影。
「K村やすらぎの里」は一番好きだったかもしれない。老人ホームに旧知の女性を見舞った作者自身と思しき女性が、付き添いのN子さんから聞かされる特殊な性癖(小学生時代、怪我をした男の子を見て興奮し看護婦になり…)それ自体もとんでもない話なのだけど、さらにもう一段回オチがついてて唖然。
「P夫人の冒険」も面白かった。P夫人、繁殖用に飼育されている豚なんですけど。トリュフ捜索中に、荒々しい野性の猪に襲われ、その男(※猪)に攫われるようにして駆け落ちするも・・・というなんとも大胆な設定。豚と猪なのに、なぜかとても官能的。
赤ずきんのパロディのような「赤い帽子」、女性カメラマンに恋した女性の顛末「逆光の中の樹」、私小説風の「引き裂かれて」と、最後まで飽きずに楽しめた。「引き裂かれて」に出てくる映画監督って実在してるのかしら?
※収録
オートバイ/二つの月の記憶/K村やすらぎの里/P夫人の冒険/赤い帽子/逆光の中の樹/引き裂かれて
- 感想投稿日 : 2018年6月25日
- 読了日 : 2018年6月24日
- 本棚登録日 : 2018年6月25日
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