- Amazon.co.jp ・本 (110ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062143998
感想・レビュー・書評
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とても好みの短編集だった。乙女ではなく、ダークな少女小説...。どこがどう好きなのか、的確に表現できないことに我ながらがっかりだけど、「ムムッ」ということをさらりと、非常にさらりと書いているように思う。忘れないうちにマンディアルグのオートバイを読もう...。カバーを外した装丁も素敵。
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ちょっとほの暗い・・・そう、この表紙のような感じ。
どれも空気が伝わって良かった。 -
「逆光の中の樹」がいっとうにすきだ。このひとの描くエロチシズムには不思議な魅力を感じる。
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2010/06/01読了
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傷だらけの天使の綾部貴子役で出ておられたな。古びた蓄音器から流れるドイツ語の音楽とともに。なんだか神秘的で、ドキドキしていた。どんな書斎で、どんな文机に座り、どんなペンを持ってこれを書かれたのだろう?壁にはどんな絵が掛けてあったのかな?ドキドキしながら読み進めた次第。
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以前読んだ書評エッセイ(誰のだったか忘れた…)で、絶賛されていたのでいつか読みたいと思っていた岸田今日子。どうしても女優さんとしての印象のほうが強いけど、お父さんは劇作家の岸田國士、お母さんも翻訳家でしたっけ?ある意味文学的サラブレッド。そりゃ文章センスも良いわけだ。
こちら短編集ですがどれも面白かった。幻想的でエロティックで、オチで一ひねり効いていて、初期の倉橋由美子あたりに近い印象。
「オートバイ」は暴走族の若者の話かと思いきや、マンディアルグの『オートバイ』の思い出とからめて思いがけないオチがついててビックリ。「二つの月の記憶」は幼い息子が仮面ライダーの人形で遊ぶのを眺める母親がふと気付く過去の幻影。
「K村やすらぎの里」は一番好きだったかもしれない。老人ホームに旧知の女性を見舞った作者自身と思しき女性が、付き添いのN子さんから聞かされる特殊な性癖(小学生時代、怪我をした男の子を見て興奮し看護婦になり…)それ自体もとんでもない話なのだけど、さらにもう一段回オチがついてて唖然。
「P夫人の冒険」も面白かった。P夫人、繁殖用に飼育されている豚なんですけど。トリュフ捜索中に、荒々しい野性の猪に襲われ、その男(※猪)に攫われるようにして駆け落ちするも・・・というなんとも大胆な設定。豚と猪なのに、なぜかとても官能的。
赤ずきんのパロディのような「赤い帽子」、女性カメラマンに恋した女性の顛末「逆光の中の樹」、私小説風の「引き裂かれて」と、最後まで飽きずに楽しめた。「引き裂かれて」に出てくる映画監督って実在してるのかしら?
※収録
オートバイ/二つの月の記憶/K村やすらぎの里/P夫人の冒険/赤い帽子/逆光の中の樹/引き裂かれて -
とにかくとっても好きな作品。官能的でありながら幻想的であり、すごく危うくて繊細な世界が静かに静かに書かれていて、脳がすーっと冷える感覚がした。
特に私が好きだったのは表題作の「二つの月の記憶」と「K村やすらぎの里」。子どもの頃のふとしたきっかけで生まれたようなほのかな恋心が、縺れに縺れて狂気じみていく様にひたひたと怖さを感じる。岸田さんの他の作品も読みたくなった。 -
官能的な香りを匂わせながらも、文体は乾いている。頭の中で朗読される声に抑揚はなく単調で、一語一語を丁寧に発音しているように聞こえる。けれど最後に、どうしようもなく心がかき乱された。二つに分断されたものを強引に結合させようとしたときに生じる歪みを精製して創作された話、という印象を受けたからだと思う。だからそこには当然、境界など存在していない。現在と過去も。現実と夢も。真実と嘘も。
“人はいつも引き裂かれている。上半身は空に、下半身は土に。男と女も、国と国も、自分と他人も”
自分さえも、ままならない。
《2015.10.03》 -
短篇7本を収録。どの話も独特の世界観があった。幻想的で、ときにエロティックで引き込まれる。「本当のことを、作り話として聞いて」という女性の、うしろ暗い過去に耳を傾ける「K村やすらぎの里」、祖母を訪ねる若い娘とオオカミの遭遇を描いた「赤ずきん」のパロディ「赤い帽子」、叶うはずのない夢を胸に抱えた女性が、月日を経て約束の結実を目の当たりにする「引き裂かれて」が好き。
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短編集。1つ目の「オートバイ」は、をを!さすが!と思ったのだけど、全体的に、「大人にしてあげた小さなお話」ほどのときめき感は少なかったかな。