仮面の告白 (新潮文庫)

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久しぶりの再読。昭和24年、三島24歳のときの半自伝的小説。「永いあいだ、私は自分が生れたときの光景を見たことがあると言い張っていた。」で始まる幼少期からの回顧。厳しい祖母に育てられ、女の子たちとしか遊ばせてもらえなかった幼年時代。

やがて逞しい労働者や汗くさい兵士などに心惹かれ、聖セバスチャンの絵に興奮するように。そして中学の同級生で留年しているので年上の野卑な少年・近江に強く惹かれるようになる。雪の日の場面など、まるで近江はコクトーの『恐るべき子供たち』に登場するダルジュロスのようだ。

自分が同性愛者であることに悩みながら、主人公は親友・草野の妹・園子に女性としては初めて惹かれるものを感じる。もしかして彼女となら…という淡い期待。しかしやはり女性に性欲は感じない。園子との結婚の話を結局主人公は断り、園子は別の男と結婚するが…。

初めて読んだときは作中の主人公と変わらない年齢だったこともあり、たとえば同性愛者の苦しみ悩みというのは理解できなくても、戦争が、戦争で死ぬことが、何もかも終わらせてくれることへの希望、みたいな、屈折した心理には共感した記憶がある。死ぬのは嫌だし戦争にも行きたくないのに、戦死してしまえば自分の嘘や罪は露見することなくすべて丸く収まるはず、という期待。

今読むと、主人公の魅かれる男性像が独特でガチっぽいなと思う。年下の美少年にちょっと惹かれる的な題材は昔から結構いろんな作家が描いているけれど、結局美少年というのは女性の代替物のようなところがあり、つまり最終的には異性愛者(あるいは両刀)でしたとなるけれど、マッチョな肉体労働系に魅かれるあたりが、三島らしい。そして、自分がそうなりたい、という願望との一体化。

園子は結局主人公にとってなんだったのかなあ。謎。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○三島由紀夫
感想投稿日 : 2021年1月2日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年8月8日

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