私と踊って (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2015年4月30日発売)
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かなり雑多で整合性のない短編集なのだけれど、作者自身の解説を読むと、なるほどこの作品を書かれたのはそういう経緯で、とそれぞれの由来がわかってちょっとスッキリ。ネタバレが若干あるけれど、この解説読んでからのほうが面白く作品を読めるかも。実在の人物へのオマージュ作品が意外と多いので、元ネタがわかっていたほうが楽しめる部分もあったり。

まず表題作「私と踊って」はピナ・バウシュ(いつか生でみたいと思ってるうちに亡くなってしまって残念)、「二人でお茶を」は早逝したピアニスト、ディヌ・リパッティ(この人は知らなかった)、「台北小夜曲」「火星の運河」の台湾もの2作品に登場する映画監督Yのモデルはエドワード・ヤン(ものすごく昔に観た『牯嶺街少年殺人事件』という映画がすっごく好きだった)、「東京の日記」はリチャード・ブローティガンの孫が書いているという設定。

「劇場を出て」は多部未華子ちゃんの写真集に、「聖なる氾濫」「海の泡より生まれて」「茜さす」はNHKのドキュメンタリー番組用に書き下ろされたものだとかで、その他サスペンス調あり、犬や猫のショートショート風あり、ホントにあった怖い話あり、別作品のスピンオフありで、個々にそれぞれ面白いけれど統一感はなかったかも。

お気に入りは、不規則な移動を続ける世界の不条理SF風「少女界曼陀羅」、台南の幻想的な「火星の運河」、憑依だったのか妄想だったのか物悲しい余韻の残る「二人でお茶を」、表題作の「私と踊って」、大地震後の東京がプチディストピア化する「東京の日記」など。

※収録作品
心変わり/骰子の七の目/忠告/弁明/少女界曼陀羅/協力/思い違い/台北小夜曲/理由/火星の運河/死者の季節/劇場を出て/二人でお茶を/聖なる氾濫/海の泡より生まれて/茜さす/私と踊って/東京の日記/交信

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  >あ行
感想投稿日 : 2015年8月25日
読了日 : 2015年8月24日
本棚登録日 : 2015年8月24日

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