小川洋子さん編集のアンソロジー第二弾。相変わらずいかにも「らしい」素敵なセレクト。作品ごとに編者の短い解説エッセイがついており、そのエッセイもなかなか面白い。けして幻想的ではなかったはずの作品が、小川洋子のこの解説エッセイによって途端に幻想味を帯びてきてしまうことも多々あり。
川上弘美、泉鏡花、梶井基次郎、中井英夫あたりは既読だけれど好きな短編。読んだことのない作家で良いなと思ったのは魚住陽子「雨の中で最初に濡れる」、小池真理子「流山寺」と日和聡子「行方」。個人的に自分が死んだことに気づいてない人の話が好みなせいもある。岸本佐知子「ラプンツェル未遂事件」と武者小路実篤「空想」は掌編なのだけどオチが効いててどちらもなんだか可愛らしいと思ってしまう。色川武大は何作か読んで本人が妙な懲り症なのは了解していたけれど、「雀」を読むとしみじみ、遺伝だな、と思った。
解説で自身でもおっしゃってましたが、河童、猫、牧神、鯉、雀、兎、と、なぜか動物の出てくる話が多いのも特徴。余談ですが最近「猫のアンソロジー」等をよくみかけるので、「河童のアンソロジー」を脳内で編集して楽しんでます。
※収録作品
「河童玉」川上弘美/「遊動円木」葛西善蔵/「外科室」泉鏡花/「愛撫」梶井基次郎/「牧神の春」中井英夫/「逢びき」木山捷平/「雨の中で最初に濡れる」魚住陽子/「鯉」井伏鱒二/「いりみだれた散歩」武田泰淳/「雀」色川武大/「犯された兎」平岡篤頼/「流山寺」小池真理子/「五人の男」庄野潤三/「空想」武者小路実篤/「行方」日和聡子/「ラプンツェル未遂事件」岸本佐知子
- 感想投稿日 : 2017年6月8日
- 読了日 : 2017年6月7日
- 本棚登録日 : 2017年6月6日
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