モリアーティの手下であるポーロックを手懐けて情報を得ていたホームズは、ポーロックからの暗号文でバールストン館のダグラスという男が狙われていることを解読する。しかし直後に当のダグラスが殺害されたという情報が入り、ホームズはワトスンとともに現場へ赴くが…。
ホームズもの長編4作の最後の1冊。同じく長編の『緋色の研究』『四つの署名』と同じく二部構成となっており、一部でホームズが事件を解決、二部はアメリカを舞台に、犯人による動機や原因語りの独立した物語としても読める構成。一部、二部とも、どんでん返し的なオチが用意されていてとてもよくできているのだけれど、個人的には長編の中ではこれはイマイチ。
理由としては二部の「スコウラーズ」が悪いやつらすぎて(ただのヤ〇ザ)読んでる間ずっと不愉快だったのと、蛇足としか思えない「エピローグ」でのとってつけたような展開にガッカリしたことの二点。善良な労働者の組合がいつのまにか手段を択ばないチンピラ集団になり果てたスコウラーズと、二部の語り手にはモデルがあり、「モリー・マグワイアズ」という実在の秘密結社と、ピンカートン探偵社のジェームズ・マクパーランドという実在の探偵の事件が下敷きになっているらしい。
ここからネタバレだけど、そんな実在の英雄、勇気と知略でいくつも死線を潜り抜け事件を解決したアメリカの名探偵を、作者がエピローグでモリアーティにあっさり殺させたのがあまりに身勝手すぎて勝手に憤慨。ご存じのようにモリアーティは時系列ではこれより後の事件になるが先に書かれた「最後の事件」でホームズの最強の敵として登場、ホームズに敗北するわけですが、このエピローグはつまりモリアーティがいかに手強いかということを強調するためがだけに付け足され、つまりアメリカの名探偵<モリアーティ<ホームズという、ホームズがいかに凄いかを強調するのが目的。なんかやらしいなーと思ってしまった。
あとは二部が長すぎて、一部とのバランスが悪い印象。犯人の動機語りとしては長すぎるし、ヴィクトリア朝ロンドンとチンピラが跋扈するアメリカの鉱山地帯の落差が激しすぎたかも。
- 感想投稿日 : 2023年5月6日
- 読了日 : 2023年5月5日
- 本棚登録日 : 2023年5月2日
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