薔薇の名前〈上〉

  • 東京創元社 (1990年2月18日発売)
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『バウドリーノ』『前日島』『フーコーの振り子』と新しいほうからエーコを遡ってきて、ようやく小説第1作目の『薔薇の名前』に挑戦。1987年の映画はテレビでやったときに見たと思うのだけど、僧服を着たショーン・コネリーとクリスチャン・スレータ―が中世の僧院でなんかやってたなあという漠然とした印象しか残っていなくて、オチは覚えていなかったので素直にワクワクしながら読み進める。

14世紀初頭、北イタリアのベネディクト会修道院。ある任務のために訪れたフランシスコ会修道士のウィリアムと、その弟子でベネディクト会の見習修道士アドソ。この○○会とか○○派とかの同じキリスト教の中にある派閥や異端、教皇庁と皇帝の関係などが実は複雑に絡み合って事件に影響を与えているのだけれど、正直難しすぎて全部は理解できないので、ざっくり把握するだけで流すことにする。でないと前に進めない。

物語の舞台になる修道院には膨大な書物を蔵した文書館があり、その建物は四角形の四隅に七角形の塔があり、中央に八角形の中庭があるという奇妙な形状、1階は厨房と食堂、2階は修道士たちが写本や造本をする写字室、さらにその上に迷路のような文書館、しかしこの文書館には文書館長の許可がなければ自由に出入りできない。

ウィリアムとアドソは到着早々、修道院長アッボーネから、アデルモという細密画家の修道士が遺体で発見されたことを打ち明けられ、事件の真相解明を依頼される。ウィリアムと旧知のフランシスコ会修道士ウベルティーノ、文書館長マラキーア、文書館長補佐のベレンガーリオ、古典翻訳家の修道士ヴェナンツィオ、盲目の老修道士ホルヘ、薬草係の修道士セヴェリーノ、厨房係の修道士レミージョ、その助手のサルヴァトーレ等、次々と怪しい人物が登場、事件に関する目撃証言をしたり、ウィリアム&アドソに協力したりする。

しかし二日目、ある人物が、豚の屠殺場の血のツボの中から遺体で発見される。最長老ですでに恍惚境にある修道士アリナルドは、一連の事件を『ヨハネの黙示録』に関連づけ、ウィリアムたちに文書館への秘密の入り口を示唆、その日の夜ウィリアムとアドソは文書館へ忍び込むが、そこは入り組んだ迷路のように小部屋が複雑に配列され、入口ごとに黙示録の文言が表札されていた。そして三日目、アドソが単独で文書館に忍び込んだ夜、怪しい人物が逃げ去り、一人の娘がアドソの前に現れる。その翌朝、ついに三人目の死者が・・・。

上巻はここまで。ウィリアムとアドソの師弟探偵はキャラクターが親しみやすいし、暗号解読、迷宮図書館からの脱出、スケキヨ状態の死体、禁断のBLなど、エンタメ要素が多いので、今まで読んだウーコ作品の中でダントツに読み易い。清貧論争や異端については難しい宗教的な対話が繰り広げられたりもするけれど、ウィリアムは新しもの好きで、当時はまだ珍しかったメガネを愛用、ガラス細工師である修道士のニコーラに新しいメガネを造らせようとしたり、磁石についての知識など、修道士というよりは科学者の目線で近代的な推理を展開する。

偶然にも直前に『ヨハネの黙示録』を読んだばかりだったので、お、これ黙示録のやつ!とすぐわかるので理解の助けになりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★イタリア・ローマ
感想投稿日 : 2018年5月22日
読了日 : 2018年5月21日
本棚登録日 : 2018年5月7日

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