表題作のみ長編。
深夜の散歩が趣味の青年作家・黄谷青二こと浅間信太郎は、ある晩死体を運ぶ怪しい男たちを目撃したことで犯人に間違われそうになり逃走。しかしそのピンチを「深夜の市長」なる人物が救ってくれる。夜の世界で顔がきく彼は、見た目はただのルンペンの老人。飲んだくれだけど面倒見のいい年増女お照、その娘で異形の幼女お絹、夜だけ出没する塔に住む科学者・速水輪太郎など、深夜の市長の一派と共に、T市の市長が持つ鍵をめぐる事件に信太郎は巻き込まれていく。
かつての東京市(※明治22年~昭和18年まで存在、現在の23区あたり。作品発表時は昭和11年につきまだ東京市)ながら架空のT市となっているところがちょっとSFっぽい空気もあり、脇役の個性的なキャラも面白くて、なぜか脳内では手塚治虫の絵柄で再現された。「深夜の市長」の正体が薄々わかってしまうと、その意外性のなさに少々興が削がれるのだけれど、概ね最後までスリリングで、飽きずに楽しく読めました。
他の短編では「人喰円鋸」が唐突なまでにエログロでインパクト大。夫は実は二人いる(一卵性双生児)のではないかという疑う新妻の「夜毎の恐怖」もなかなか怖くて良かった。
※収録作品
深夜の市長/空中楼閣の話/仲々死なぬ彼奴/人喰円鋸/キド効果/風/指紋/吸殻/雪山殺人譜/幽霊消去法/夜毎の恐怖
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
○乱歩・久作 他
- 感想投稿日 : 2018年1月30日
- 読了日 : 2018年1月29日
- 本棚登録日 : 2018年1月22日
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